本日も見に来ていただき、ありがとうございます。
約20年前の話を書いています。
前回の続きです。
ユキの葬儀が終わり、
私は田舎から東京に戻った。
次の日
保育園の仕事中も、
心ここにあらず…という感じで
無表情になっていたのかもしれない。
クラスの子と外遊びをしていた時、
Kくん(5歳)から優しく声をかけられた。
「ぼく、先生が笑っているのが大好き。先生は笑っている方がいいなぁ」
やばい、泣いてしまう。
私は「ちょっとトイレ行ってくるねー」と言って、トイレに走った。
Kくんの言う通りだ。
ここは仕事場。
私にどんな感情があっても、
今 目の前にいる子ども達を第一に考えなければ。
私は涙をふいて、仕事に集中した。
今 振り返っても、当時は仕事で一番忙しい時期だった。
ただ、こんなにクソ忙しい時期のおかげで、私には逆に助かったのかもしれない。
仕事に追われ、この子達を無事に卒園させるまで気が抜けない、毎日朝から晩までバタバタ。
そんな日々のおかげで、
少しずつ少しずつ、悲しみの感情が落ち着いていったのかもしれない。
そして、それから1ヶ月後には
ライブの予定が入っていた事を
私はすっかり忘れていた。
私とユキが
高校生の時から大好きなアーティスト。
でも、それどころじゃなかった。
こんな気持ちの時に、
私は行く気になんてなれなかった。
ユキはとてもツラい思いをして、癌と闘って、亡くなってしまったのに、
私だけが楽しむなんてできない。
2人でよく聴いた音楽も、そんなの聴ける状態じゃない。
と思っていた。
そんな時、私のアパートに荷物が届いた。
ユキのお母さんからだった。
手紙にはこう書いてあった。
ユキが闘病中、あなたの為に作っていた物を送ります。
私もまだまだ泣いてばかりだけど、お互い泣いてばかりはやめましょうね。
ユキの作った物を身につけて、ぜひ楽しい所へ出かけてください。
ユキも一緒に楽しんでいると思います。
箱の中には、ユキの手作りの
カエルの編みぐるみ🐸
ビーズで作った指輪、
レトロ柄の布バッグ
が入っていた。
どれもとてもかわいかった。
私の好きそうな色を選んでくれていた。
そしてユキの想いも感じた気がした。
ユキが行きたいと願っていた、あのライブ。
私はライブに行ってみようと思った。
当日、私はユキからもらった指輪をつけて、
友人とライブに行った。
その日は不思議な事が起きた。
会場は座席なしのライブハウスだったので、
私と友人が入った時はお客さんでぎゅうぎゅうだった。
だから私達は後ろの方に立っていた。
しかし、ライブが始まると私達の前方にぽこっと空間ができた。
ライブハウスではよくある事かと思い、私達は前に行こうか、と少し前に場所を移動した。
すると、また前方にぽこっと空間ができて、そこだけお客さんがいない。
また私達は、ちょっと前に行こうか、と少し前に移動した。
小さいライブハウスなので、あまり前方でぎゅうぎゅうで見るのは嫌だなと思ったけど、なぜか私達の周りだけ人がいない。
ステージも近くてよく見えるねと喜んだ時、
おいおいおい、アーティストがずっとこちらを見て歌っているではないか。
よくライブで、こっち見たー!目合った!とかあるけど、この時はステージが近いから気のせいではないと思う。
いやいや、こっちだけずーっと見てちゃダメでしょー。なに?なんか見えてるの?
となりの友人も「なんでずっとこっちを見てるんだろうね」と耳元で大声で言った。
しばらくして、
私の胸の真ん中にトンと何かが当たった。
それは床に落ち、そこにちょうどライトが当たって、私は足元に落ちたそれを拾う事ができた。
見てびっくり!それは今アーティストが使ってたギターピックだった。まだ温かい。
へ?
ピック投げる時って、投げる動作するよね?
さっきそんな動きしてないじゃん。
となりの友人は、ふと見たら私が
手のひらにピック持ってるから、
「なんでピック持ってんの?」
と驚いていた。私も驚いて固まった。
何十年もライブに行っているけど、こんな事は一度だけ。
友人はユキの事も聞いていたから、
「きっとユキちゃんからのプレゼントだよ」と言った。
ユキも一緒にライブ見てたかな。
その日の夜、ユキの夢を見た。
夢の中のユキがにっこり笑って言った。
「今までありがとう。
でも泣いてばかりいちゃダメだよ。」
とてもリアルな夢だった。
ユキにまた会えた気がした。
ユキ、楽しい思い出をたくさんたくさんありがとう。
だけどユキのいない人生は、大きく何かが足りません。私の一部が欠けてしまいました。
いつも何かあれば一番に報告して、ユキの話を聞いたり、アホな事で笑い合ったり。
それができないのが、とても寂しいです。
この喪失感はだんだん薄れていくのでしょうか。
でも私も、毎日泣いてばかりじゃなくて、後悔ばかりじゃなくて、
前を向いて生きていこうと思います。
ユキ、29歳まで一緒に生きてくれてありがとう。
そしてこれからも、よろしくね。
大親友が26歳で乳癌になった話
はこれでおしまいです。
ユキが亡くなって20年経つし、
さすがにもう大丈夫だろうと、
今までもらったたくさんの手紙を読み返しました。
そしたら、やっぱりダメでした。号泣でした。
でも20年以上も前の ユキの文章が、
今の私を笑わせてくれたり、励ましてくれたり、元気をくれました。
たまには泣いてもいいですよね。
自分の心にわいた感情を
あまり閉じ込めることなく、
悲しみも寂しさも、
しっかり味わって
また前に進みたいと思います。
そして
やっぱり直筆の手紙はいいですね。
いきなり始まったこの大親友シリーズに、
お付き合いいただき、
いいねをくださったり、嬉しかったです
ここまで長々と読んでいただきまして
ありがとうございました