本日も見に来ていただき、ありがとうございます。
約20年前の話を書いています。
前回の続きです。
ユキは26歳の若さで乳癌になり、
左胸を全部切除した。
27歳のユキは、リハビリも頑張り、前向きに病気と向き合い、闘っていた。
抗がん剤治療もして、その影響で髪は抜け、
それでも弱音を吐くこともなく、
明るく「新しいウィッグは調子いいよー」なんて話していた。
20代の若い女性にとって、
左胸全部切除や、髪の毛が全部抜けることは、どれほど辛い現実だったことか。
当時の私は、ユキのつらさなんて、少しも分かっていなかったんだな。と今になって思う。
友達だからって、いいとこばかり見せるんじゃなくて、
つらい、苦しいと、もっと言ってほしかった。
私には我慢しないで、大変さをぶちまけてほしかった。
でもこれも私のエゴなのか…
さて、入退院を何度かして、
抗がん剤治療も落ち着いた28歳の頃、
ユキが東京の私のアパートに泊まりに来た!
ユキにとっては久しぶりの東京だし、
彼にもゆっくり会えるし、
長旅ができるくらい体力も戻ってきて、
嬉しかった。
ユキは数日間、我が家に滞在し、
私が仕事に行っている間は、ユキは友達に会い、買い物をしたり食事をしたり…
夜には今日あった事を報告してくれた。
そうそう、2人で念願のライブにも行った!
「左腕のリハビリにもなるから、ノリノリの曲では腕を上げるんだ」と張り切っていた。
ライブ中、隣を見ると、ニコニコ笑顔で腕を上げ、リハビリ(ライブ)を楽しんでいたユキ。
ある曲のラストでは、力強くこぶしを握り、両腕をしっかり伸ばしていた。
その時の歌詞は「このまま死なねーぞ」
私はそれを見て涙が出た。
どうか死なないで。
いろんな感情が混ざって、ライブ中こっそり泣いていた。
あっという間に最終日の夜になり。
一緒にご飯を作って食べている時、
ユキに電話がかかってきた。
電話の相手はユキの彼だ。
私はお邪魔になったら悪いと思って、近くのコンビニに飲み物を買いに行った。
私が戻ってくると、ユキは電話が終わって、泣いていた。
彼に別れを告げられたのだ。
おい、彼氏、信じてたんだぞ。
病気と闘うにはあなたの力が必要だと。
遠距離恋愛でも、カノジョが乳癌でも、
2人には別れないでいてほしかった。
理想は一緒に闘ってほしかった。
けれど、それも私のエゴなのか。
思い通りになんていかないし、若い彼が病気のユキに真剣に向き合うほど、怖くなるのも分かる。
ひどい…とその時は思っていたかもしれないが、誰も悪くはないのだろう。
私はユキと一緒に泣いた。
ひたすら現実が悲しかった。
その夜、寝る前に、ユキが初めて身体が痛いと教えてくれた。
首の後ろと、腰が痛いと。
その時の私達はまだ知らなかった。
今思えば、それは骨に転移している痛みだったのだろう。
また次回に続きます。
重い話でごめんなさいね。
読んでくださってありがとうございました