ヤブコウジとツルコウジ

ヤブコウジ、ツルコウジとも林床に生える小低木。ちょうど隣り合わせに生えているところがありました。


ヤブコウジとツルコウジ
ヤブコウジとツルコウジ



葉陰に赤い実が見える大きな楕円形の葉をつけたものがヤブコウジ、その周りにある卵形の小さな葉をつけたものがツルコウジです。

同じ仲間の2つの植物がうまい具合に隣り合わせて写真に収まってくれました。


ヤブコウジ(ヤブコウジ科)

ヤブコウジは高さ10-30cmになる常緑小低木、地下茎が長く伸びて先は直立して地上茎となり、ほとんど分枝しません。北海道(奥尻島)、本州、四国、九州に分布しています。


ヤブコウジ全体
ヤブコウジ



 ヤブコウジは、うす暗い林床にふつうに見られます。赤い実を柑子(こうじ・・・みかんの一種で果実はウンシュウミカンより小さい。)に見立てたところの命名です。


 20cm前後の小さな植物であるヤブコウジですが、歴史のある植物で、中国では古くから薬用植物として見出され、日本においては万葉集の中にヤブコウジ(山たちばなと書いている)をうたった歌が5首あり鑑賞の対象として見られてきました。

 ヤブコウジはマンリョウやカラタチバナ、オモト、イワヒバなどとともに江戸時代に栽培が流行した古典園芸植物の一つです。江戸時代には斑入り葉や変形葉など45品種があり、ずいぶんと高値で取引されたようです。現在でも20品種ほどが残っているそうです。(「花と木の文化史}(岩波新書)より)

 

 センリョウ(千両)、マンリョウ(万両)に対し、カラタチバナは百両、ヤブコウジは十両と称される縁起のよい植物でもあります。


ヤブコウジ実
ヤブコウジ



花は2-5個咲きますので、実も2-5個あります。


ヤブコウジ
ヤブコウジ


これは実が3個見えています。

葉は茎の上部に輪生状に集まり、長楕円形でへりに細鋸歯があります。





ツルコウジ(ヤブコウジ科)

暖地の林下に生える小低木。匍匐枝は長く這い、所々輪生状に2-数個の葉をつけ、先は立ち上がって高さ5-10cmになります。

本州(千葉県以西)、四国、九州に分布しています。


ツルコウジ全体
ツルコウジ



 天草では、ツルコウジもうす暗い林下で普通に見られる植物で、名前のとおりつる状になって林床を這いまわっています。千葉県以西にしか分布していないところを見ますと、ヤブコウジに比べると暖地性の植物であることがわかります。寒いところが苦手なのですね。

 ヤブコウジやカラタチバナ、マンリョウが観賞用に古くから栽培されて重宝されてきたのに比べると、同じヤブコウジ科なのにどうしてこうも扱いが違うのでしょうか?? 

這いまわったのがいけなかったのでしょうか?  立ち上がっていたならば扱いが違ったのかもしれません。


ツルコウジ実
ツルコウジの果実



花は2-4個つきますので実も2-4個つきます。


ツルコウジ茎の毛
ツルコウジの茎と葉



茎も葉も褐色の長毛があります。 葉は卵形~長楕円形。