「自分の信念で生きるというのは、刃物の上を素足でわたるようなものです。自分の体の平衡は自分の渾身でとらねばなりません。平衡がくずれれば、足裏を刃物が裂くのです。~中略~。信念というののは、余分なものを削りすててゆくものです。鉄棒が、刃のようになってしまい、ついにはカミソリの刃のようなそぎたちになってしまいます、右もよからず左も悪ししとなれば、当然刃が薄くなりまさるでしょう。生きてゆくには、その信念に、自分の体重をかけざるをえないのです。氏は、安易な道をゆかず、そのように、ただ一人の道をゆきました。息を詰めるようにして、生涯、その上をわたりきりました。」
「以下、無用のことながら」司馬遼太郎著 文藝春秋社 本文
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「人生なんであれ、素直でまっすぐな執念をつらぬくのが幸運をよびこむいちばんの秘訣のような気がしてなりません。それに尽きるとしかいいようがないのです。」
「以下、無用のことながら」司馬遼太郎著 文藝春秋社 解説(山野博史)より