くるくるくるくるくるくるーー
また始まった…。
【千夏と華那】
くるくるくるくるく「ねぇちーちゃん」
「なあに!華那ちゃん!」
授業が終わり引き出しに教材をしまい、イスの背もたれを脇に挟むようにして後ろを向けば、まるで散歩に出る前の子犬の様な、キラキラした表情の千夏の顔。
その笑顔を間近で見て、スッと視線を千夏の指先に移す。その指は自分のポニーテールの端を掴み、くるくると絡みつけるようにいじり続けていた。かれこれ授業が終わる10分前からずっと続けている。
それを指差しながら一言。
「これ、やめてって」
すると千夏はハッとして指を引っ込めた。
「なにそれ無意識?」
すると罰が悪そうに千夏が苦笑いしながら、離した指先でこめかみを掻く。
「だってさあー、折角の綺麗な髪だからさー触りたくなっちゃうじゃん!」
「なっ!べっ、べつに綺麗じゃないよ!何言ってんだよバカちー!」
…うぬ。
まんざらでもない華那の反応に、本気で怒っているわけではないと理解した千夏は、ホッと胸を撫で下ろした。華那の方を見れば横を向いてしまっているせいで表情は見えないが、その指先は先程まで自分がそうしていたようにくるくると髪をいじっていた。
(こういうとこがかわいいんだよな華那ちゃんはww)
きっとその顔は薄く赤らんで、への字を作っているに違いない。
そんな事を思いならが千夏はふと思いたつ。
「ねぇ、華那ちゃんさー、なんでいっつもポニテなの?綺麗な髪なんだから、どうせなら下ろしてみてもいいんじゃないー?」
思い立ったと言っても随分前から華那の髪を見るたびに思っていたことだった。いつも言いそびれてしまっていたが今日は忘れずに伝えらることができた。
「なんとなくコレが気に入ってるからこれにしてるだけ。それにしても先生遅いね、HR始まんないじゃん。」
華那は千夏の質問に素っ気なく応答し、そのまま前方の自分の席に身体を向けて黒板上の時計に目を移す。
と、後頭部に何やら違和感がーー
ハッとして見てみれば、千夏が自分の髪留めのゴムを取ろうと引っ張っていた。
「なっ!!!ちーちゃん何すんの!!やめて!」
思わず大声で叫んでみたが、帰宅前のざわついた教室内に溶け込んでしまったせいで必死さが千夏には伝わらない。
「いーじゃんもう授業終わったんだし、髪垂れて集中出来ないとかそんな理由でしょー華那ちゃん真面目なんだからーもー。」
千夏は遠慮なくグイグイとゴムを引っ張ってゆく。その感覚にフリではなく本気でゴムを取りにかかっていることを悟った華那は、今度こそ本気で抵抗を始める。
(だめっ!今とったら…!)
が、その甲斐もなく
スルッーーーー
華那の朝から締め付けられていた髪の毛は水を得た魚のように、バサッとゴムから解き放たれた。ロングヘアの端は背中に付くころには綺麗に揃えられ、あたりにはにわかに花の香りが漂った。
しかし、特にゴムで締め付けられていた後頭部の髪は重力に逆らって少し宙に浮いた状態のまま。
華那が無言で触ってみれば、不自然にポコっと髪の毛が膨らんでいるのが指先で感知できた。
と、同時に聞こえてきた、呑気な声。
「わああ、華那ちゃんやっぱり綺麗じ」
ーーーーーーーーパァン
ざわついた教室内に甲高い音が響き渡る。
千夏は何が起こったのかわからなかった。
かろうじてわかるのは、右頬がやけに熱いことと、前方から聞こえるすすり泣く声、と、その声の主。
ゆっくりと顔を戻して上に視線を向ければ、さっきまで可愛く照れていたはずの親友が髪を抑えながら立っていた。その目には大粒の涙が今にもこぼれ落ちるんじゃないかという程溜め込まれている。
千夏は目を見開く。
「か、華那…ちゃん…?」
口はかろうじて回るが、頭は真っ白で名前を読んだあとが続かない。
すると、華那の唇が震えながら何かを発し出した。
「やだっ、て…いっ、たの、に」
右手の平が、熱い。
口を開いた瞬間、頬に熱い水が流れ落ちていくのがわかった。
ボロボロボロボロ落ちていくそれは、親友の行為に対してか、自分の行為に対してか。
わけがわからないまま、千夏から視線をそらせば、教室の生徒の視線が自分達に向いているのがわかった。これ以上こんな頭も顔も見せなくないとばかりに、華那はカバンを乱暴に掴み抱えると教室を飛び出して行ってしまった。
▸後編へつづく
ーーーーーーーーーーーーーー
予想以上に話が長くなってしまったため、前編と後編に分けて書かせていただくことにしました。
後編は現在作成中です。
ゆっくりと顔を戻して上に視線を向ければ、さっきまで可愛く照れていたはずの親友が髪を抑えながら立っていた。その目には大粒の涙が今にもこぼれ落ちるんじゃないかという程溜め込まれている。
千夏は目を見開く。
「か、華那…ちゃん…?」
口はかろうじて回るが、頭は真っ白で名前を読んだあとが続かない。
すると、華那の唇が震えながら何かを発し出した。
「やだっ、て…いっ、たの、に」
右手の平が、熱い。
口を開いた瞬間、頬に熱い水が流れ落ちていくのがわかった。
ボロボロボロボロ落ちていくそれは、親友の行為に対してか、自分の行為に対してか。
わけがわからないまま、千夏から視線をそらせば、教室の生徒の視線が自分達に向いているのがわかった。これ以上こんな頭も顔も見せなくないとばかりに、華那はカバンを乱暴に掴み抱えると教室を飛び出して行ってしまった。
▸後編へつづく
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予想以上に話が長くなってしまったため、前編と後編に分けて書かせていただくことにしました。
後編は現在作成中です。