まず始めに、日本におけるサラブレッドの進化は2000年代前半に到達点に達しているというのが持論になります。

近年東京、阪神、小倉あたりが馬場の高速化を推進して、とてつもないタイムを出している事で、20年前の馬より今の馬の方が断然強いという見立てになりがちですが、馬場の高速化を推進してない中山、福島、新潟あたりでは、2000年代前半のレコードがずっと破られずに残っていたりします。とりわけ高速馬場の代表格である新潟で、尚且つタイム=実力が成り立ちやすい、1000m、1200mのレコードが2000年代初頭のままというのは、裏付けとして強いのではないでしょうか。

欧米の例も出して解説したい所ですが、長くなり過ぎるので割愛します。


ただ、現在は配合理論×生産頭数×育成技術のし進歩・施設の充実3点を掛け合わせる事により、平均レベルの底上げが成されているのは間違いありません。ノーザンFなどはこの3点をフル活用して、安定して毎年上限値付近の馬を送り出す事に成功しています。

イクイノックスが史上最強馬候補として頭一つ抜けてるのは否定し難い所ではありますが、同じくノーザンF勢のアーモンドアイ、リバティアイランド、エフフォーリア、クロノジェネシス、リスグラシューあたりは、ピーク時の強さは殆ど差が無いでしょう。実際には最も得意とするコースや条件が、最強馬決定戦となりやすい東京2000~2400か否か。得意条件に絞った使い方をしているか。程度の差と思います。

例えば東京2400を走らせてさえいれば、上記の馬たちと互角以上のパフォーマンスを見せた公算は高いが、走らせて貰えなかったフィエールマンみたいな馬がいたりもすからです。


こういう時代の変化もあり、ディープインパクトのような同一レースの連覇を含まないG17勝馬や、テイエムオペラオーのような同一年古馬中長距離G1 完全制覇を成し遂げる馬が今後現れる可能性は、ほぼ無いでしょう。


少し話がズレましたが、例年の最強クラス=サラブレッドの上限値付近の馬が毎年現れる事は、ある程度担保されていると結論付けています。

なぜなら上記の馬たちは、僅か5年間の間に、歴代最強クラスの評価を獲得した馬たちだからです。近年はもう、それこそ毎年のように最強クラスが出てるんです…。


しかし、例外がある訳です。

それは長期間チャンピオンサイアーとして君臨したサンデーサイレンス産駒がいなくなってからの3年間です。ディープインパクト産駒がいなくなった現在とオーバーラップするはずです。


前回の「今」であるサンデーサイレンス産駒がいなくなったクラシックは2007年から始まります。

2007年は皐月賞を7番人気ヴィクトリーが逃げ切り。以降馬券に絡んだのはG2で3着が2回あるのみ。2着も2番手からレースを進めた15番人気サンツェッペリンと早速大荒れ。伏兵の前々決着とレベル的にもかなり怪しい幕開けです。ダービーも牝馬のウッォカに歴史的勝利を献上しています。世代No.1とされたフサイチホウオーは皐月賞3着、ダービー7着、以降急速に衰え一度も馬券内に来る事無く引退。菊花賞はアサクサキングスが勝利も、古馬になってG2を2勝、G1では天皇賞(春)で3着が1回あるだけ。


2008年は皐月賞を7番人気キャプテーントゥーレが逃げ切ります。昨年同様に伏兵の逃げ切りを許す形になりました。それよりも1番人気がマイネルチャールズ(3着)だったあたりに、後生から見ると当時の混迷ぶりが伺えます。ダービーはディープスカイが勝ち、秋は神戸新聞杯も勝ちましたが、古馬相手には2着3回3着1回と善戦したものの、勝星を挙げる事が出来ずに引退。菊花賞はオウケンブルースリ。7歳まで走りましたが、G21勝G12着1回。


そして2009年は2023年に最も似ている印象の年です。皐月賞が完全な前崩れでアンライバルドが驚異的な脚で突き抜けますが、以降精細を欠き一度も馬券内に来る事無く引退。そもそも皐月賞が前崩れになるのは極めてレアであり、2007年、2008年以上にレベルが低い可能性が高いです。

ダービーは皐月賞で1番人気で撃沈したロジユニヴァースと2番人気で撃沈したリーチザクラウンのワンツーでしたが、不良馬場で行くだけ行ったら何も来なかったというレース。

その後ロジユニヴァースは状態が上向かず長期休養を繰り返し、札幌記念の2着があるだけ。リーチザクラウンは7歳まで走りましたが、馬券内に来たのは僅か3回。気性の問題から、ダービー2着馬としては異例のマイル路線へと進みましたマイラーズCを勝利しましたが唯一にして最後の勝鞍となりました。

菊花賞に至っては1800~2000mの自己条件しか走った事が無い、1000万級を勝ち上がって来たスリーロールスが勝つ始末。しかも次走有馬記念で競争中止→引退しています。

2023年と共通点を感じる部分は多いのではないでしょうか?


上記三年の牡馬クラシック勢の悲惨さは伝わったと思います。2023年組が同じ道を辿る可能性も高く、4歳牡馬をG1で積極的に買うのは危険と言わざるを得ないでしょう。

ちなみに翌2010年にディープインパクト産駒がデビューし、ステイゴールド、キングカメハメハ、ハーツクライらと鎬を削りながら不動のチャンピオンサイアーへと登り詰める事になります。同時に国産種牡馬が国内競馬を席巻し、世界でま通用する時代の幕開けとなりました。


ここまで長くなりましたが、2023年牡馬クラシック、マイル路線から振り返ります。

【朝日杯FS】

ドルチェモアが新馬→サウジアラビアRCからの三連勝を決めた。しかし、年明けNZTの7着を最後に二桁着順を重ねており、重賞戦線で全く通用していない。


このレースから現在オープン入りしているのはわずか5頭。

内ドルチェモア、2着ダノンタッチダウン、6着オールパルフェは2歳の賞金でオープン在籍しているだけで、通用してるとは言い難い状況。


唯一年明け重賞勝ちした7着オオバンブルマイも、勝ったのは重のアーリントンC。その後稍重のNHKマイルC3着→稍重のオーストラリアのG2勝ちと評価は難しい。


後は超素質馬と目されていたレイベリングが今年3月に3勝クラスを4戦目でようやく勝ち抜けた程度で、残りは1勝2勝クラスで踠いており、2歳マイル路線自体が文句無しの低レベルだったと言える。


続けてマイル路線

【NHKマイルC】

勝ったシャンパンカラーは次走安田記念1.2秒差の14着。4㎏差を貰ってもハイレベルな古馬マイル勢相手には、てんで勝負にならなかった。その後はフェブラリーS、高松宮記念とチャレンジングな出走を重ねており、本来のマイル路線での活躍に対する諦めを見せている。


2着には牝馬のウンブライルが入っているが、復帰戦の東京新聞杯で0.6秒差9着と破れており、強調出来る程の存在ではないでしょう。

以下3着オオバンブルマイ、4着ダノンタッチダウンと前述の2頭。


少なくともマイル路線はレベルが(とてつもなく)低かったと断定して良さそうです。


ホープフルS から始まる中距離路線は次のブログに移します。