このところ古い小説ばかり読む傾向があるので、たまには近年の作品も読まねばと手にしたのは、「むらさきのスカートの女」、「こちらあみ子」の今村夏子作品、「星の子」。

帯に記された紹介文。

主人公のカルト宗教2世の女の子から見た社会の詳説です。
今村作品は、重いテーマを軽く、ときにはコミカルに描きます。文体はさわやかでぐいぐいと読めるのですが、読後感がやたらに重いのは、「こちらあみ子」で感じたのと同じでした。
カルトネタといっても直接的なカルト批判の話ではないです、カルト二世の存在についてを、読者に考えさせるようにもって行くのが今村流といったところでしょうか。

最後の、娘との別離を覚悟したと察せられる、親娘でともに星を見るシーンでは、友達同士で見られた流れ星、親と一緒だと見られなかった流れ星、それらの対照により、カルトに染まっているか否かの違いによって見えるものが違うということ、いいかえれば「越えることが困難な壁」を表しているように思えます。

安倍晋三と統一教会の癒着が次々と明るみに出ている現在、カルト宗教をネタにした小説とはどんなものだろうか思いながらと読み始めましたが、反社団体をばっさりと切り捨てるような爽快さはありません。人間の弱さと優しさについて、しみじみと考えされられる一冊でした。

第157回芥川賞候補作。
ちなみに第157回芥川賞受賞作は、沼田真佑の「影裏」。

作者プロフィール。

書誌情報。

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p.s. 今日はよく寝た。棋王戦、たっくん残念。