
大人になってから海外文学をほとんど読まなくなりました。
小さい頃は児童向けの本なら海外文学も少しは読んでいたのですが、高校生になってからはほぼ100%日本の作家ばかり、ごくたまに音楽つながりでエミリー・ブロンテとかポール・ギャリコを読んだりしてましたが....
で、どの本だったかは失念してしまいましたが、カラマーゾフ兄弟の大審問官の箇所を解説していて、それが難解ながら哲学的で面白そうに感じて、一度読んでみなきゃいかんなと思いつつ時間は過ぎていたのですが、ウクライナ侵攻の件もあり、ロシア文学も読んでみますか、という気分になってこれを読み始めました。
カラマーゾフの兄弟といえば、あちこちでその評価は高く、モームが世界10大小説に入れていたり、村上春樹が重要とする3冊の本に入っていたり、OKComputerさんもベストの一冊に挙げるほどの、この本を称賛する声は枚挙に暇がありません。
というわけで、この歳になっての初カラマーゾフなんですが、どの本を読もうかというのが最初に迷ったところ。あれこれ調べて、読みやすいという評判から(誤訳も多いみたいだけど)亀山訳の光文社古典新訳文庫をチョイス。
全部で5冊。シュールな表紙が素敵です。
厚さはまちまち。
一度に買いそろえたのではなく、読んでは次の巻を買って、と古本で集めました。
作者と訳者のプロフィール。
1巻めは名前とキャラクターを覚えるため、時間かけてゆっくり読んでいったのですが、やはり大審問官のところで時間が掛かってよくわからん小説のイメージができかけてたところに、カテリーナとグルーシェニカの痴話喧嘩あたりからすらすらと読めるようになり、ゾシマ長老の説話が終わってからは怒涛の展開に興奮を覚えながら、気がつけば最後まで読み終えていました。
5巻はエピローグだけど、後はほぼ翻訳者による解説なので、ここはパス。読み直したときに改めて解説を読んでみようと思います。
哲学的でもあり、心理小説でもあり、推理小説的でもあり、コメディありサスペンス(裁判シーン)あり、と長編でも飽きがこないバラエティ豊かな内容でした。ドストエフスキーの自伝的意味もあるようです。
難解さと言うか、奥の深さをを感じた小説でした。また時間をおいて読み直してみようと思います。
作者まえがきでも触れられていますが、この小説には第二部の構想があって、それへの布石だろうかと感じた内容も2つほどありました。ひとつはリーズという少女、ストーリーの中でこの少女の関連性がいまひとつわからない。もうひとつはコーリャという少年でこれもリーズと同様の印象。
前述したこの小説を評価している人達ほど、この小説を理解するレベルまでは行ってないのは明らかで、スメルジャコフ、もとい、スルメじゃないけど読めば読むほど味がでてくる小説だなというのが、現時点での感想です。
やっと登場人物の名前を憶えられたので、忘れないうちに^^;読み直さねばと思っていますが、いつになるやら。
さて、この本を読んで、ひとつ謎が解けたようで解けていないのが、こちらの一冊。
仮面の告白。
この小説の冒頭で、カラマーゾフの兄弟を引用しています。
アリョーシャが家への近道を通るときに、見張りをしていたドミートリーに会って話した内容で、虫けらに好色を、と語った文句なんですが、これが仮面の告白に引用されているのはなぜか?
カラマーゾフの兄弟を読み終えたいま、三島の意図がわかるのか?
いや、わかりませんでした^^;
あと、やはり三島が昭和43年に書いた「文化防衛論」のなかの次のくだり、「社会主義が厳重に管理し、厳格に見張るのは、現に創造されつつある文化についてであるのは言うまでもない。【中略】ソヴィエト革命政権がドストエフスキーを容認するには五十年かかってなお未だしの巻があるが、」と、文化の表現規制についての一文についてはドストエフスキーの名がでたことの意味が、カラマーゾフの兄弟を読めば理解が深まるかな、とも思ったのですが、これはドストエフスキーの創造性だけではなくソ連の歴史を知ってこそ理解できる、ということがわかりました^^;
もうひとつ、この小説のポリフォニーに面して、ああ、似ているなと頭の中を過った三島の小説があるのですが、そちらもまた読み直してみたいと思ってます。これはまたそのうちに書きます。
p.s. コンサートの後に飲んでカロリー等大幅オーバー。