『アルテミスと死せるオーリーオーン』 出典:Wikipedia
オリオンは、ギリシャ神話に登場する巨人の狩人です。
海の神ポセイドンとミノス王の娘エウリュアレとのあいだに生まれました。
背の高い偉丈夫で、稀に見る美貌の持ち主でした。
父親であるポセイドンから海を歩く力を与えられ、海でも川でも陸と同じように歩く事ができたそうです。
最初の結婚
成人になったオリオンは、ボイオティアで暮らしていました。
やがてシーデ(柘榴の意)という大変美しい娘を妻に迎えます。
ところがシーデは、非常に高慢で、「私の美しさは、全知全能の神ゼウス様の妻ヘラよりも美しい」と述べ、女神ヘラとその容色を競いあいました。
このためヘラは怒り、シーデを冥府(タルタロス)へと落としてしまいました。
獅子退治
妻を失ったオリオンは旅人となり一人で諸国を放浪していました。
キオス島に立ち寄ったオリオンは、その島の王オイノピオンの娘メロペに一目惚れしました。
何とかメロペの愛を得ようとしたオリオンは、得意の狩りに出掛けては獲物を彼女にプレゼントし、やがて結婚を申し入れます。
しかし、メロペも父のオイノピオンもオリオンを好ましく思っていませんでした。
困った王はオリオンの死を望み、島を荒し廻っているライオンを退治することを条件に、娘との結婚を承諾することにしました。
王は当然不可能な条件と考えますが、オリオンは難なくライオンを殴り殺し、その皮を王への贈り物にしました
オイノピオンの裏切り
思惑のはずれたオイノピオン王は、結婚の約束を実行せず、オリオンをこの件ではぐらかし続けました。
オリオンは、王が約束を守らないことに怒り、酒に酔った勢いでメロペに力ずくで迫り犯してしまいました。
オイノピオンは怒り、父である酒の神ディオニュソスに頼んでオリオンを泥酔させ、彼の両眼を取って盲目にしてしまい、海岸に捨てました。
目の治療
盲目になったオリオンは、身動き出来ずにうずくまっていました。
彼に対し神託は、
「東の国に行き、ヘリオスが最初にオケアノスから昇るとき、その光を目に受ければ、再び目が見えるようになるであろう」
と告げました。
オリオンは、遥か東のレムノス島へと向かいます。
盲目の彼は、キュクロプスの槌を打つ音を頼りに、レムノス島に辿り着きました。
こうしてヘパイストスの鍛冶場に入り、ケダリオンという見習い弟子をさらって、彼を肩に乗せ案内させてオケアノスの果てまで辿り着きました。
彼を見たエオス(暁)がオリオンに恋をし、兄ヘリオス(太陽神)がオリオンの目を治しました。
目を治したオリオンは、オイノピオンに復讐しようと再びキオス島に戻ります。
オイノピオンは、ヘパイストスがオイノピオンのために造った地下室に隠れていたため、オリオンに見つかりませんでした。
オリオンは、オイノピオンが祖父ミノスの元に逃げていると考え、海を渡ってクレタ島へと行きました。
クレタでは、アルテミス女神がいて、共に狩りをしようとオリオンを誘いました。
エオスとの交際
すぐに気を取り直したオリオンは、今度は曙の女神エオスとの恋に夢中になりました。
更にオリオンは、エオスとの交際中にもかかわらず、アトラスの娘プレイアデス7姉妹に恋をし、彼女等を追い掛け回しました。
エオスの仕事は夜明けを告げることですが、オリオンと付き合っている間の彼女は彼に会いたいがために仕事を早々に引き上げてしまいます。
ところが、夜明けの時間が短くなったのを狩りの女神アルテミスは不審に思い、エオスの宮殿がある、世界の東の果てまで様子を見にやってきました。
そして、オリオンはアルテミスと運命的な出会いをするのです。
アルテミスとの交際
ギリシャの狩人と狩猟の女神が恋に落ちるのには、時間は掛かりませんでした。
オリオンはアルテミスと共にクレタ島に渡り、穏やかに暮らしていました。
神々の間でも二人の仲は評判になり、互いに結婚も考えていました。
ところが、アルテミスの兄アポロンは、オリオンの乱暴な性格を嫌い、また純潔を司る処女神・アルテミスに恋は許されないとして二人の仲を認めず、ことあるごとにアルテミスを罵ったが、彼女は聞き入れませんでした。
そこで、アポロンはオリオンの元に毒サソリを放ちます。
驚いたオリオンは海へと逃げました。
ちょうどその頃、アポロンは海の中を頭だけ出して歩くオリオンを指し、
「アルテミスよ、弓の達人である君でも、遠くに光るあれを射ち当てることは出来まい」
と逃げるオリオンを指差したのです。
あまりにも遠く、それがオリオンと認識できなかったアルテミスは、
「私は確実に狙いを定める弓矢の名人。簡単です」
とアポロンの挑発に乗って、弓を引きます。
矢はオリオンに命中し、彼は恋人の手にかかって死んでしまいました。
オリオン座の伝説
矢を射たものが浜に打ち上げられて、初めてそれがオリオンだったことに気がついたアルテミスは、神としての仕事を忘れるほど悲しみました。
アルテミスは、死者も蘇らせるという名医アスクレピオスのもとを訪ね、オリオンを生き返らせてくれるよう頼みます。
しかし、冥府の王ハデスが反対しました。
アルテミスはせめて最後にと、大神ゼウスに「オリオンを空に上げてください。そうすれば、私が銀の車で夜空を走って行く時、いつもオリオンに会えるから」
と頼み込みました。
さすがのゼウスもこれを聞き入れ、オリオンは星座として空に上がりました。
彼は月に一度会いに来るアルテミス(月神)を楽しみに待っていると言われています。
なお、さそり座は、アポロンが謀ってオリオンを襲わせ、彼が海に入る原因となったサソリであると言われています。
そのためオリオン座は今も、さそり座が昇ってくるとそれから逃げて西に沈んでいくと言います。