ギリシャ神話における原初の神カオスの次に生まれた原初の神々のひとりであるエレボスとニュクスの間に生まれたカロン。
カロンは、船の櫂(かい)を持ち、襤褸(ぼろの衣)を着た、光る眼を持つ長い髭の無愛想な老人で、死者の霊を獣皮で縫い合わせた小舟で彼岸へと運んでいます。
渡し賃は1オボロスとされており、古代ギリシアでは、死者の口の中に1オボロス貨を含ませて弔う習慣があったそうです。
1オボロス貨を持っていない死者は後回しにされ、200年の間その周りをさまよってからようやく渡ることができたと言います。
あの世でも、金なのか…
基本的に生者は船に乗せずに追い払いますが例外もあります。
①ペルセポネと結婚しようと画策したペイリトオスと、彼を手伝おうとしたテセウスは舟に乗せている。
②ヘラクレスがヘルメスの協力で来た際にはヘラクレスに力ずくで打ち負かされて出航を許します。
③オルペウスがエウリュディケを連れ出しに来た際には、彼の竪琴と歌声に魅了されて、言われるままに船を出しただけでなく、ハデスの館でもっとその歌を聞こうと彼の後に付いて行きました。
ヘラクレスを通した件では、これが元でハデスに罰せられ、1年間鎖に繋がれてしまったそうです。
この他にも…
④父アンキセスから未来を聞く為、冥府に赴こうとしたアイネイアスが、巫子シビュレの協力でペルセポネに捧げる黄金の枝を持ってやって来た時は、その尊い贈り物に機嫌を良くして彼を通しました。
⑤プシュケが、アプロディテから出されたエロスと結婚する為の試練の一つとして、冥界へ向かった時には、冥界に行く為に高い塔から飛び降りようとしたプシュケに塔自身が助言し、口の中に渡し賃の貨幣を2枚含み、それぞれ1枚ずつを行きと帰りに使ってカロン自身の手に取らせる方法を使い、無事にステュクスを往復しました。