※ユンジェリアル※
二人が出会ったことに もしも意味があるとするなら
こんなに苦しいのは 今だけだよと 自分に言い聞かせて
「…ヒョン! ジェジュンヒョン!」
トントンと肩を叩かれて、自分のことを呼んでいるのだとやっと気付いた。窓の外にやっていた視線を声のほうに向ければ、まるい眼がふたつ眼の前に飛び込んでくる。
「じゅ、ジュンス、近い」
「だって何回も呼んでるのに! もう会見はじまるよ? 行こーよ」
「あ…もう、そんな時間?」
「そうだよぉ」
ぷくうっと頬を膨らませる弟の頬をゴメンゴメンと撫でて、吸っていたタバコを片手でアッシュトレイに押し付けた。
「今日が大事な日だってわかってる? アルバム発売なんだからね! 答えなきゃいけないことも、インタビューでいっぱいあるんだからね!!」
「わかってるよ。ちょっと空を見てたんだ、ホラ、今日すごく晴れてるから綺麗で」
「空ぁー?」
「うん」
頷いて、ジュンスの頭を撫でてやる。そして思う、ああ、ユノもよく、こうやってジュンスの髪の毛を撫でてあげていたなと。
「ヒョーン? ヒョンってばー」
今日はオレたちのアルバムの発売日だ。収録曲はほぼオリジナルで、書きためた曲、新たに書き下ろした曲を詰め込んだアルバム。in heavenというタイトルは、ユチョンが提案した。3人で話し合って、決めたタイトルだ。神に捧げる、天上にまで届くといい、オレたちの音楽が。そう、願いを込めて。
ユチョンが、ジュンスが。そして、オレの愛するあの人が信じる、絶対神。
その人の耳にまで、命を削って作った、血を吐く想いで紡いだこの曲たちが、届いてほしいと。
神様。
オレはあなたを、信じてなんか、いないけれど。
オレの愛する家族は3人も、あなたのことを信じてるから。心の底から信じていて、拠り所としているから。
少しでいいです。耳を貸してくれれば。
オレの大切な家族を…幸せに、してください。
「もー! ヒョン、また飛んでるしー!!」
ゆちょーん! ヒョンが上の空だよー、ぼく心配だよーと後ろを振り返って叫んでいるジュンスの背中越し、もう一人の弟がへにゃっと眉毛を下げて、微笑みながら口にくわえたタバコをゆらゆら揺らしながら言う。
「ジュンスぅー、こっちおいでー。ジェジュンヒョン、ドラマ終わったばっかだしさあ、疲れてんだよ」
「だってもうすぐ会見始まんのにっ。って、ユチョナも! いつまでタバコ吸ってんの! もう消しなよね!」
「ジュンスがオレんとこ来てくれたら消すってー」
「調子のんなデコ」
「ひっで!」
軽口をたたきながらもユチョンのほうへと歩いていって、ソファの上でくすぐりあっこを始めた弟たちを見て、思わず笑みがこぼれた。
ユチョン、おまえは本当にやさしいね。兄さん想いの、本当にいい弟だよ。
うっかり浮かびそうになった涙を上を向くことで呑みこんで、ふーっと深呼吸をする。
「お、チャンミナからメールだ」
「えーっ、ほんと?! 見せてみせて!」
「待って、んっと…『アルバム発売、おめでとうございます。僕たちも日本でアルバムを発売しましたから、買ってくださいね』……って、これ祝ってくれてんの? それとも宣伝メールなの? なんなの?!」
「うきゃんきゃん!! チャミナらしいな~!」
携帯を覗きこんで吠えているユチョンと、その隣で笑い転げているジュンス。
その横にふっと、そのジュンスに寄りかかりながら両手を叩いて同じように笑い転げる可愛いマンネの姿がオレには、見えたような気がした。
『ユチョンヒョンもジュンスヒョンも、ボクとユノヒョンのアルバムそれぞれ20グロスは買ってくださいね? もちろんヒョンたちのポケットマネーですよ、費用は。異論? 認めません。なんですか? 文句でもあるんですか? お?』
そうやって生意気な口を叩いて、ユチョンとジュンスにこづき回されてうれしそうに笑っているチャンミンの姿が、見えたような気がしたんだ。
「…逢いたい…」
ふっと胸に込み上げた。しあわせだった日々。疑うことを知らなかった頃のあの日々。永遠につづくと思っていた、5人で一緒に暮らしていた頃のこと。
そして同時に思い出す。信じていたものが崩れた瞬間の、絶望。言い表せないほどの、暗闇を。
(やばい、…泣く)
泣いちゃだめだ、だって今日は。
「JYJの皆さん、スタンバイお願いしまーす!」
「「はーいっ」」
スタッフさんに呼ばれて、弟二人が元気よく返事を返した。ソファから立ち上がった瞬間、それまで見えていたチャンミンの姿が消えた。
「あ…」
行かないで。零れた言葉に、ユチョンがいち早く気付いて目をぱちりと瞬く。
「ヒョン?」
あれ、視界がぼやける。なんでだろう。
おかしいな。そう思ったら身体をあたたかいものに包まれた。
「ヒョン、ヒョン。泣かないで。大丈夫だよ、大丈夫だから」
「ジェジュンヒョン、泣いてるの? どうしたの? 大丈夫?」
ぎゅうっと抱き締める腕が強くなる。ジュンスに頭を撫でられて、ユチョンに抱き締められて、気付いた。ああ、オレ、泣いちゃったのか。
「ごめ…大丈夫、ちょっと…」
「いいよ。謝らないで。」
「ヒョン、泣かないでよぉ」
あたたかい声に、腕に、余計に涙がこぼれそうになった。けど、弟たちにこれ以上心配をかけるわけにはいかないし、時間だって迫ってる。
ぎゅっと二人の身体を抱き返して、息を止めて、涙を飲み込んだ。
大丈夫、大丈夫。オレはそんなに弱くない。まだやれる。立ち上がれる。護る為だったら、耐えられる。
泣いてなんか、いられないんだ。
すうっと深呼吸をもう一度して、鼻を啜って、二人の腕から離れた。眼元を拭いながら「行こうか」と笑ってみせる。
「ヒョン…」
ユチョンが何かを言いたそうにしていたけれど、それを遮って腕を掴む。
「行こう。オレたちを認めてもらいに。」
そう言って、弟二人の腕を取って歩き出した瞬間。
『ジェジュンア』
呼ばれたような気がして、振り返った。
がんばれ。そう言われたような気がして、振り返った。
BGM:JYJ「IN HEAVEN」 東方神起「Weep」 HY:[song for],[あなた]
会見前の3人を妄想してみた。
ユノの登場シーン、最後3行…笑!
ジェジュンの、「逢いたい」ってツイートがですね。胸にジン、ときまして。
逢いたいって。
二人に、逢いたいって。
ユノとチャンミンに、逢いたいって。
どんな思惑が、とか、いろいろあるのでしょうが、それでも本人の口から、逢いたいって出たことが。
「TONE」と「IN HEAVEN」。
合わせたら「TONE IN HEAVEN」―――天国に響く音。
こじつけでもいい。
こじつけでも、こんな風にこじつけれちゃうアルバムをそれぞれ出したことが、すごいなあと思います。
