●ALS第5話(全7話) | 大森善郎のビジネス英語道場

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大森善郎のビジネス英語道場「オバマ大統領のスピーチから学ぶ世界の一般常識」

いつもの信介とは全く違う声だった
「克也が…難病で死にそうなんです」
「いったい何なんだ」

「筋萎縮云々・・・」
「何なに?」

「ALSっていう病気です
来週見舞いに行きましょう」
「わかった、おれも調べてみる」

それから必死で調べた
調べれば調べるほど…灯りが見えないことがわかった
一切の治療方法がない
原因不明
手立てなし
筋肉が衰えていく
足から手、呼吸器から全身に及び、最後は眼球しか動かせない

ヨーロッパ・アメリカの知人にも調べてもらった
やはり同じだ

しかしアメリカである治験が実施されていることがわかった
残念ながら治す効果ではなく、副作用はあるが、進行を遅らせる効果が人によってはみられる、という曖昧なものだ
(だが、もし遅らせられたら、その間に治療薬が開発されるかもしれないじゃないか)

サンフランシスコに駐在している後輩に調べてもらった
なんと知人の知人が担当の医師を知っているという
そして詳しくは直接電話をしてくれ、というところまでたどりついた

懸命に医学用語を付け焼刃ながら勉強し、国際電話をかけた
中国系医師で、幸いゆっくりと分かりやすく話しをしてくれた
幸か不幸か話は短く終わった
要するに、なぜならば非常にプライバシーに関わることなので、患者から直接詳細を尋ねてほしいということだった
(当然といえば当然すぎることかもしれない…)

しかし灯りが全く無いわけではなくなったんだ
よし、克也を説得してみせるぞ
心に誓い、次の週末、信介と新幹線に乗り込んだ

- 続く -

(追記)
こうして書いてきて、当時のことを思い出し、葛藤しつつあります
軽々しい気持ちではない

しかし家族の苦悩を思えば私の気持ちなどいかにちっぽけなものか
…だが、やはりALSのことを一人でも多くの人に「知ってもらう」ために、筆を折らずに書きたいと思います…


(第6話へ続く)



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英語レッスンの記事はこちらに引越しました。