時々読んでみて良かった本の紹介をしてきたのですが、

またとてもいい本を見つけました。

タイトル横の( )には、おすすめの年齢を記載しました。

 

 

「スピニー通りの秘密の絵」

作者はこれがデビュー作の、L・M・フィッツジェラルド。

ハーバードとケンブリッジで美術史を学んだ才女です。

 

ジャンルは児童文学ですが、

児童文学には大人も十分楽しめる名作がたくさんあります。

この作品も、大人も楽しめる極上の美術謎解きミステリーです。

 

トムハンクスが主演して映画化された

ダンブラウン作「ダヴィンチコード」が好きな方なら

きっとこの物語も好きなはず!

 

主人公のセオは13歳の女の子。

働き者で画家の祖父と、数学にしか興味のない母との3人で

ニューヨークのグリニッジビレッジのスピニー通りで

先祖伝来のボロ屋敷で貧しいながらも楽しく暮らしていました。

ある日、祖父が目の前で事故にあい、

「卵の下を探せ…。手遅れにならないうちに…」という謎の言葉を残して他界。

一家の稼ぎ頭を失ったセオの、残る財産はたったの384ドル。

 

祖父の言葉に、一家を救う鍵があると感じ、セオは謎の解明に乗り出します。

 

そして見つけた絵がラファエロの作品かも知れないことに気づき、

偶然知り合った、有名俳優を両親にもつボーディとともに

謎解きを進めていきます。

 

 

セオの親友になるボーディは、有名人の両親ゆえにパパラッチに追われる生活で

若干人間不信。学校に行かずにホームエディケーションで過ごしています。

(ホームスクーリングの、スクーリングがないもの、と本には記載されています。

インターネットで好きな時に勉強する、「インデペンデント・スタディ・プロジェクト」

と言われているもの。教育後進国と呼ばれる日本には残念ながらこのシステムはありません)

 

貧しさゆえに友達も作らず、TVもラジオもない環境で

祖母の遺した服をリメイクして自分用にしたり

家庭菜園でほぼ自給自足の生活をしているセオと、

スマホやネットを駆使する現代っ子のボーディと

逆の生活をしている二人が個々の個性を認め合いながら育まれる友情も

この物語で好きな点です。

 

絵に隠されたラファエロの秘密

祖父が関わった第二次世界大戦のナチスの暗部

 

美術と歴史の謎は、いつの時代も人を惹きつけるものがあります。

 

私が海外作品を読んで好きだと感じるのは

個性が当たり前に尊重されている心地よさ。

日本の作品も個性豊かな人物がよく登場しますが、

「変わり者」「変人」扱いが多いので

海外作品の「変わり者」とは空気感が違う。

変わり者であることに違いはないのですが(笑)

 

彼女たちの世界では当たり前のことだから

そんなことを伝えようという気持ちは

著者にはないのかも知れないけれど

 

私はついつい深読みしてしまいます照れ

不登校に関わるようになってから

本を読むときもついついダイバーシティな社会には

敏感に反応するようになりました。

ある意味職業病だ(笑)

先日紹介した茂木先生の本も

タイトルは好きじゃないのに

さらっと手に取ると「ホームスクーリング」

の言葉が目に入ってきてついつい読み進めてしまいました。

そういった類の本たちが

集まってきてくれているのかなと

本に感謝です♪

 

NYの美術館のほとんどは、どんな人でも気軽に楽しむことができるように

無料あるいは気持ち程度の寄付で入場できるようになっています。

それは、どんな環境の人でも自分の感性を磨くことができるということだし

ボーディのような個性の強い子がホームエディケーションを選択していることも

個々を生かした学びが保証されている多様性を描いている。

 

これが心地よい。

 

 

映画を見ているかのように楽しめる本です。

本好きな子なら小学校高学年からも楽しめると思います。

大人にもオススメ!!

 

春の読書の一冊に、いかがですか?

 

フリー写真 エスプレッソコーヒーと本