よくお客様にメニューを見ながらこう聞かれる。
「オススメはなんですか?」
私にはこの質問の意図することが不可解でならない。
お客様は私が勧めるものならなんでもおいしいと言うのだろうか?
「私はアナタに絶対的な服従をしています。アナタがおいしいとお勧めするなら間違いありません。」
食べ物には好き嫌いがあって当然なのに。
私の勧めたものが本当に美味しいかどうかなんて当てになるはずがない。
なぜならば、私とお客様は全く別の人間であり、同じ環境で生活しているわけでもなく、ましてや年齢さえも全く異なるからだ。
それが同じ味覚には成り得ないのだ。
同じ家族でさえ好き嫌いがあって当たり前なのだ。
それなのに「私のオススメ」を聞いてきて、それを注文しようとする。
もしかすると「私のオススメ」が自分の好みでなかったとするならば、質の悪いお客様ならこう言うかもしれない。
「オススメだって言われて頼んだけど、たいしたことなかったわ。」
さらに「あの店って言うほどじゃないよねぇ」なんて他人に口コミで拡めたりする。
つまり自分で決めていなから、すぐに他人のせいにしたがるのだ。
私がお客様に提示できるのは、その商品に関する情報だけ。
あとはお客様自身で決めていただくのが、もっとも不満の少ない結果になると信じている。
「オススメは?」
なにかこう聞くことで自信が食通だとでも思っているなら考えなおしたほうがよろしい。