佐原さん、ちょっと興奮しているな。どうやら店主さん、早速カフェシェリーに足を運んで何かに気づいたようだ。
「佐原さん、お義父さんに何か変化があったのですか?」
「あったもなにも、私にとっては大迷惑ですよ。昨日ふらりと出かけたかと思ったら、帰ってくるなり『今までのやり方ではダメだ、まずは接客をしっかりとやっていくぞ』なんて言い出したんですから」
「いいことじゃないですか」
「冗談じゃありませんよ。店番をやっている私の身にもなってください。せっかくお気楽に座っていればアルバイト代がもらえたのに。お義父さんのケーキは味はいいって評判だから、それでやってくるお客さんばかりだったのに」
「だったら、なおさら接客サービスがうまくいけば、お店は繁盛するじゃないか」
「でも、それだと私はどうなるんですか?」
「佐原さん、あなたはお義父さんのお店が繁盛するのが嫌なのですか?」
「嫌って、そんなことはないですけど。でも、私の居場所がなくなってしまう…」
なるほど、これでわかった。佐原さんは自分の心地よい居場所がなくなるのを嫌っていたんだ。それでこの営業所も、私が面倒なことをやりはじめたのに対して、猛反発をしてきたのか。