第76話 山あり谷あり その23 | 【小説】Cafe Shelly next

【小説】Cafe Shelly next

喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「お昼ごはん、一緒にどうかなって思って」

 間違いなく私を誘ってくれている。夢ではないだろうか?

 ほっぺたをつねろうかとも思ったが、さすがにそこまではしない。これは間違いなく現実なのだから。

「は、はい。ぜ、ぜひご一緒にっ」

 声が裏返ってしまった。それを見て笑う白崎さん。ちょっと恥ずかしかったけれど、それ以上に有頂天になってしまう自分がいた。まさに天国だ。

 それから白崎さんが先導して、和食屋さんへと足を運ぶ。だが、ここで天国から地獄に落とされる事態に。

「あれ、白崎さん」

 お店に入った時にそう声をかける人が。なんと同じ部署の男性社員が二名もそこにいるではないか。この連中が、白崎さんと仲良さそうに話しているところを見て、私に対して乱暴でそっけない態度をとったやつらだ。

「えっ、なんで皆藤さんもいるの?」

 私の姿を見て驚く二人。今度こそまた何か言われるに違いない。きっと私に対して嫉妬心を抱くはずだ。

 そう思うと、さっきまでのあの天にも登る気分はどこかへ吹き飛んでしまった。それよりも、来週からどうしようという不安が襲ってくる。

 このとき、ふとあの言葉を思い出した。カフェ・シェリーの看板のあの言葉。