人生山あり谷あり、なんてうまく言ったもの。

この歳になっても、思いがけないことがあるもので……。

決して見通しの効く丘に立っているわけでもなく、ただ流れていく雲の行方をぼんやりと目で追っている感じに似ています。

掴みどころのない曖昧さが、かえって想像力を掻き立ててくれたり、と……。

 

 

一見同じように思うけれど、実はまったく意味は違いますが、『降っても晴れても 』という曲があります。

エラのような可憐なのに深みのある声でそう歌われると、聴いていると無条件にその説得力に圧倒されてしまいます。

相手への愛の深さを語りながら思いを伝える『Come Rain Or Come shine 』。

 

ふと、若い頃のことを思い出してみたり……。

 

山下公園の向かいに位置する『ホテルニューグランド』。

『ザヨコ』も悪くないけど、やっぱり特別な日は何と言っても『ニューグランド』。

 

ホンモノとニセモノを敏感に意識していた頃。

年を追うごとに、ただ幻想に憑りつかれていたに過ぎない、ということに気づかされる始末です。

自分がどう思うかで、すべては決まるもの。

自分たちのプレーに徹する、とインタビューで答えるスポーツ選手たち。

それこそがホンモノの証であり、不安をかき消す自信のような気がします。

 

 

もし、ビリー・ホリデイをホンモノとするなら、アニタ・オデイやエッタ・ジョーンズでさえもニセモノになってしまいます。

そんなことは、絶対にあり得ないこと。

各々が持つギフトや熱量の差ではなく、気概に満ちた揺るぎない自信なのではないか……、ホンモノとはそんな気がします。

 

ナンシーウィルソンの歌声は、シルクのブラウスのようなしっとりとした息遣いを感じます。

ちょっとした仕草にも、はっと息を呑んでしまうような。

いくつになっても、くすぐられる気持ちの部分には変わりがないのかもしれませんね。

 

 

膝の手術をして行楽シーズンを棒に振ってしまった今、できることを楽しむ余裕があることに感謝します。

私と夜と音楽と、それにあとDVD。

それでも、時々溜め息が出るのは精進が足りないところですかね。

まだまだホンモノには辿り着けそうに自分に、また溜め息ひとつ……。

 

 

阿川泰子のプロ根性には、若い頃からずいぶんと勉強させられました。

彼女もホンモノだと思います。