よく、キャッチコピーなんかに、『〇〇のような』みたいな文言を見かけます。
昨年、近くにある音楽ホールで行われたときのこと。
会場前に、メンバーが掲載されているチラシに目を通していました。
『レスターの流れを汲む』、とスウェーデンから来られたテナー・マンのことを紹介していました。
しかし、演奏がはじまると、スピリチュアルな雰囲気のオリジナルが中心で、少々食傷気味に。
クインテットです。
編成は素敵なのですが、合う合わないの域。
トランペッターのCDを持っていたため、どんな風な演奏になるのか、期待していたのですが……。
バド・パウエルを思わせるような……。
クリフォード・ブラウンの再来……。
ビル・エヴァンスのようなリリシズム……。
いかにも飛びついてしまいそうなキャッチコピー。
でも、いちばん困惑しているのは、当の本人ではないですかね。
意に沿わない触れ込みは、双方に対し、いい影響を与えることはありません。
演奏者、観客、それをビジネスに繋げるプロモーター。
それぞれの立場が、歪んだトライアングルの中で平衡感覚を失っていることもしばしば。
レスター・ヤング、テディ・ウィルソン、ジーン・ラミー、ジョー・ジョーンズの演奏は、それぞれの個性がうまく溶け合っている感じです。
半拍ずらしたり、途切れるはずのフレーズを粋に繋げるテナー。
寄り添いながら、鍵盤の上を流麗に跳ねまわるピアノ。
アンプを通さずとも、つねに力強いビートを繰り出すベース。
曲調に合わせて、小気味よく空間を埋めていく絶妙なドラム。
『恋のチャンス』を聴くたびに頬が緩みます。
今日は、いい天気です。
早じまいをして、バイクで海岸線でも流してみたい気持ちになりますね。
無理ですが……。