今日は、昨日より8℃も気温が高まるとのこと。

少しずついい方向に進んでいるような錯覚に陥ります。

 

自分が求めているモノの輪郭さえ理解できずに、悶々と過ごしていたある日。

突如として目の前にその姿を現し、飢えていた心に一筋の光明が差し込む。

その瞬間から、何の躊躇もせず、加速度的にその世界へと傾倒していきます。

そんな経験は、誰しも持っているのではないでしょうかね。

 

 

私の場合、そのひとつは雑誌『メンズクラブ』、でした。

ページをめくるたびに、嗅覚さえくすぐるスナップと記事の数々。

私の住む地域は田舎なので、当然広告に掲載されているようなワードローブを手に入れることはできません。

京都や大阪までは、汽車に揺られて3時間の道のりを要します。

ある時、広告主であるブランドの住所宛てに、手紙を添えて現金書留を送りました。

礼節をわきまえることすらよくわかっていない高校1年生の頃です。

今でもクローゼットの中で、その時買ったバルキーセーターは、思い出とともに静かに息をひそめています。

 

 

FMと言えば、NHKのみ。

当時、FMファンという雑誌から、多岐にわたる音楽への入り口を教えてもらいました。

聴きはじめたジャズを中心軸に据え、ちょっと都会的なフレーバーを醸すボズ・スキャッグスやボビー・コールドウェルのレコードを好んで買ったものです。

日本人では、門あさ美なんて最右翼。

でも、少し背伸びが必要でした。

そこで、ラジオで聴いてKOされたのが、中原めいこの『フライデー・マジック』、でした。

『2時までのシンデレラ』、がヒット、次の『ミント』、で助走をつけて『ロートスの果実』、で実を結ぶ感じですかね。

時世は、バブルの真っ只中。

歌詞にも絢爛さが溢れています。

少し鼻にかかったような声が、なんとも心をくすぐります。

 

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ポーカーフェイスにならなくちゃ

今夜はクレイジー・ナイト

みんな楽しそう

夏の終わりに乾杯してる

 

仲直りもせずに

ひとりで来たから

避暑地のコテージも

ブルーなのよ

――

アルバム『2時までのシンデレラ』に収められた『ダイヤル回して』の歌詞の一部です。

ジャケットを眺めながら、レコードをよく聴いたものです。

アパレルの頃、銀座3丁目の百貨店の売り場の人たちと一緒に泊まった河口湖畔のコテージ。

バブル後期の懐かしい思い出のひとつです。