このところの憂さを晴らすような青空が広がっています。

気温も、陽射しに比例して上がるとのこと。

いつもの通勤時の小さな峠でも、ついアクセルを踏み込みがちに。

片手でハンドルを握り、もう一方はコンソールボックスの上。

お気に入りのCDが、心地よく耳に入り込んできます。

ジェーン・モンハイトが軽やかに歌う『Taking a chance on love』。

走りながらケータイを向けたので、ピントが今一つ。

私の人生と同じかもしれません。

 

若い頃は一抹の不安を抱えながらも、捉えようのない心の渇きに葛藤していたような……。

それが、ある意味無鉄砲なくらいの推進力を作り出していたようにさえ思います。

時間は容赦なく流れ、痛々しいまでの熱を孕んでいた感情は遠い過去のこと。

 

風を切りながらバイクを走らせると、意味もなく切なさがシールドへと入り込んできます。

お気に入りの音楽をかけてハンドルを握っていると、対象のない懐かしさのようなものが心に広がってきます。

 

焦燥観念でもなく、また悔恨の念でもない。

ただ、静かに郷愁の風に吹かれているようなもの。

 

春の風は、過ぎ去ったいくつもの季節のシーンを、いたずらに切り取っては、温もりを感じさせながら優しく思い出させてくれる気がします。

クラッチを切って、軽く踏み込む。

あとは、時の流れに合わせて気持ち良くシフトアップさせられれば、と思います。

 

あの頃の自分に伝えたいのは、いくつになっても精神的欲求はなくならない、ということ。

それは、おそらく男女ともに言えることだと思います。

焦る必要なんて、どこにもありません。

いくつになっても好奇心旺盛でありたいものです。

 

会社の玄関先で煙草を吸っていると、近所の家から『さくらさくら』をなぞるオカリナの音色が耳に届きます。

穏やかな一日のはじまりです。

 

 

確かモンクのコンペティションで優勝されたと思います。

おぼろげな記憶ですが……。

そしてその後、ミュージシャンの奥さんになられたような……。

もう、ずいぶん前のものですが、私のお気に入りの一枚です。

ジェーン・モンハイトの『テイキング・ア・チャンス・オン・ラヴ』。

こんな素敵な日には、うってつけの音楽です。