不思議なもので、同じものを作っても美味しいものと、そうでないものがあります。

好みによるところも大きいので、一概には言えませんが……。

 

どれくらい昔なのかは知りませんが、古くから門前にてこし餡のお餅をお土産として販売されています。

私も幾度か、観光客気分を装い自転車で訪れたりします。

春先や秋の訪れに、海沿いの遊歩道をゆっくりとペダルをこぎながら、風を感じては景色を味わいます。

 

手にした瞬間に違いを感じ、口に入れると明らかに別のものと判断してしまいます。

こし餡の滑らかさ、餅の柔らかさ、舌触りのしっとり感。

やはり、相手には美味しいものを差し上げたいものです。

 

初めて出会うものは、いいものでないといけません。

せっかくの興味さえ、一瞬にしてどこかに消え去ってしまいます。

教えを乞うなら、いい先生。

美味しいものを食べるのなら、いいお店。

音楽をきくなら、いい演奏家。

初めて押し開ける扉の向こうには、素敵なものが溢れていてほしいもの。

期待を裏切らない、確かな手応えを感じさせるような……。

そこには個人差や好みといった嗜好ではなく、切磋琢磨の賜物が燦然と存在します。

利益は大切ですが、それ以上にいいものを提供しようとする心意気が大切なのではないですかね。

 

春節に合わせ、広場で通常の何倍もの高値でマスクを販売する中国人。

日本でも、以前ダフ屋が横行していましたが……。

足元を見る人は、相手より優位に立てるかもしれませんが、同時にその人の品位さえも落としてしまいます。

反対の立場になった時、悔しくて唇を噛み締めること請け合いです。

 

フレディ・レッドのアルバムに『ザ・コネクション』、というアルバムがあります。

麻薬とジャズのミュージカルのためにフレディ・レッドが作曲したもの。

ブルーノートにおける、ジャッキー・マクリーンをフロントに据えたカルテットが一般的です。

興味深いのは、同じ曲を同じ順番でフレディ・レッドは違うレーベルに、自分を除いて違うメンバーによるクインテットの演奏を残しています。

そのあたりの事情にスポットを当てて、映画かラジオドラマになれば面白い気がします。

同じ『ザ・コネクション』、というアルバム。

どちらがいいのか、ってことは、やっぱり嗜好によりますかね。