今朝も、頭上には厚い雲が広がっています。
陽射しもなく、比較的穏やかな気候です。
ガレージの隣にある竹林が、さわさわと風に靡いています。
遠くの稜線に視線を向けると、空との境界線に薄いねずみ色のグラデーションがかかっていました。
動きが鈍い分、感覚が研ぎ澄まされるのでしょうかね。
草木の揺れ、トンボの動き、鳥のさえずりに、気持ちが和みます。
朝に届く、サマー・ブリーズのような東からの風に、心がふわっと舞い上がります。
今日のアルトサックスのレッスンも、この分だとお預けですね。
痛くてじっと立っていられません。
なんだか、情けなくなってきます。
気持ちの推移や感情の浮き沈み、それらの葛藤や焦燥を経て一人の人間として成長していく物語には、胸を熱くさせるものがあります。
『U-571』だったと思います。
二階にある自分の部屋の書棚に収まっているので、取りに行くことができないのですが、あの映画は自分にとってずいぶんと有意義なヒントをくれた作品のひとつです。
私は、基本的に理想というものを高く持つようにしています。
あくまで理想で、現実とのギャップはあって当然ですが……。
従業員にもよく言うことのひとつです。
売り上げと同じで、目標を高く設定することで、結果として昨対を多く上回ることができます。
自分で限界を決めてしまうと、その先へ進むことは絶対に不可能です。
「自分には、向いていないのかもしれません」、と次を任せようとしている従業員も、以前はよく言ったものです。
今は真摯に取り組んでくれていて、とても頼もしく思っています。
副官が、次こそ自分は潜水艦の艦長になれる、と期待をしていたのですが、現艦長より認められない現実に葛藤します。
自分は、精一杯仕事をしているし、人望もある。
なのに、なぜ艦長は私を認めないのか!
こういうシーンは、日常のどこにでも潜む猜疑心そのものですね。
艦長は、その副官に容赦なく伝えます。
いちばん大切なことを。
全体を考えた場合、犠牲にならなければならない人選を即決する勇気があるかどうかです。
人情という厚い壁が、そこには冷酷にも立ちはだかります。
どんな時も、泰然自若な態度が取れてはじめて艦長と誰もが認めてくれるもの。
確か、そんなようなことを言っていたように思います。
自分なりのバイアスがかかっているかもしれませんが……。
自分だけが甘い汁にあずかろうとしていては、誰もついてきてくれません。
立場が上がっていく度に、そんなことを思います。
エニグマを奪うということよりも、非常事態を乗り越えた先に味わう本当の意味での充足感のような、一人の人間の成長として切り取ったフレームとして、私はこの映画が大好きです。
ドラマティックに演出もされ、雰囲気は抜群です。
正解のない人生を、私たちはその時々で迷っては立ち止まります。
どの方向に向かいたいのか、まるで広い海原をコンパスを片手に漂っているようなものです。
精度を少しずつ上げながら、少しずつ前を向いていきたいものですね。
29歳か、30歳の頃ですかね。
料理旅館のご主人と話をしていて、ハッとさせられたことがあります。
そのご主人は、尺八の高名な先生のようで、世界各国から生徒さんがみえられるとのことです。
普段は、家業を継いだ料理旅館のご主人です。
私が、凄いですね、と言うと、
凄いのは、ちょっと違うな、と言われました。
尺八の腕前は、確かに凄いのかもしれないが、
それに引っ張られてみんな勘違いをしているが、私と言う人間はきみとなんら変わらないんだよ。
そんなようなことをおっしゃっていました。
もう、ずいぶん前の記憶なので、輪郭はとても曖昧ですが、内容的にはそんな感じです。
そん時も、心をズドーンとぶち抜かれましたね。
器の大きさに感動しました。
多くの人から大切なことを教えてもらっています。
当分、宝探しの旅は終わりそうにはありませんね。

