今朝は、朝靄が濃く一面を覆い、

ブルーグレーの色合いに包まれた視界は、

まるでターナーの油彩画のようです。

 

ふと、神戸と和歌山はどんな景色だろう、想い描きます。

 

 

 

アルバムのタイトルや何かの特集のようなものの記事に、“ジ・アナザー・サイド・オブ・○○”みたいなものを目にします。

 

これは、“もう一つの側面”、もしくは“もう一つのストーリー”というものです。

 

若い頃は、時間の大切さに気づきもしませんでした。

 

今日と同じ日がこの先もずっと続く、と一片の疑いさえ持たずに日々を過ごしていたように思います。

 

様々な季節や風の隙間をくぐり抜けながら、自分でも気づかないまま、その時々で舵を切る選択に迫られます。

 

人生において一番大事なことは“選択する”こと、というようなことをミシェル・ファイファーの学園映画で生徒に話していたように記憶します。

 

これまでの過ごしてきた時間の長さに比べて、これから先の時間の使い方は短いながらも濃密なものになっていきます。

 

ある意味、当然です。経験値が自然に積算してくれるからですね。

 

もう一つの自分を趣味を通して、確かめるように舌の上で転がしては咀嚼していく。

 

バイクで海岸線を流すと、水平線の先に淡い想い出が鮮やかに蘇ります。

 

ビター・スウィートな感傷を、潮風がさらりと攫ってくれます。

 

ホテルで開催される社交ダンスのパーティーでのダンスタイム。

 

相手の笑顔が“あの頃の空気”を彷彿させます。

 

帰途での夜風が、淡い余韻を心地よくクール・ダウンしてくれます。

 

そう思うと、今また“the another side of me”のレールの上を――未来の地図を描きながら――走っているようにさえ思います。

 

“あの頃”と確実に違うのは、今を大切に過ごすということに心がけていることです。

 

このぶんだと今日は晴れそうです。

 

午後から、海岸線をバイクで流してみようと思います。

 

きっと、寒いとは思いますがね……。

 

『TAKE THE A TRAIN』

デューク・エリントンで有名な曲です。

大西順子さんが演奏すると、こうもカッコよくなるのか、という見本のようなもの。

ルイ・アームストロングを真似た心温まるボーカルに、闇を切り裂くように強烈に加速するトランペット。

車窓から見える景色を彩るサックス、気持ちを映し出すピアノ。

個人的には、この曲のナンバー・ワンですね。

アルバム『ピアノ・クインテット・スイート』