朝から冷たい雨が、気持ちを急き立てるように窓を叩きます。
予報では、夕方から雪へと変わるとのことです。
明日からは元日までの四日間、雪マークです。
昨日は、夜に久し振りに『カサブランカ』のDVDを観ました。
世界中の男性の憧れではないか、とさえ勝手に思ってしまいます。
見栄と僻みが絶妙にブレンドされています。
もし自分がリックだったら、同じようなことをするかもしれません。
消すことのできない悲痛な仕打ち。
理由はともあれ、そのことに対しての憤懣を彼女にぶつけると思います。
そこが、男の小ささかもしれません。
でも、傍らには紛れもない正義感が息を潜めています。
足元を見られ、不義を働かなければならない新妻に対して、
リックは手を回し、彼女がけがされずに済むよう、粋な計らいをします。
他人に見せたくない感情を無様にさらけ出すことで、
キザな一連の仕草が、決して鼻持ちならない男性とは映らないのですね。
『Men's Club』の雑誌にも、『カサブランカ』は紹介されていたと思います。
私は、元春の『バルセロナの夜』や『ハートビート』が今でも大好きです。
気持ちを代弁してくれているようで、今なお聴くと胸が熱くなります。
「どうかしたの?」
と男が聞く。
女は何も答えない。
静かな夜。
鮮やかな月の光が川面を揺らしている。
二人の息遣いだけが、風の中で震えている。
混沌と不安は容赦なく二人の体温を奪っていく。
「手を放さないでね」
と女が小さく言った。
そういう感じの世界観を勝手に想像してしまいます。
元春の一枚目、二枚目、三枚目あたりは、そんな雰囲気ですね。
理性を切り裂き、感情を煽る。
こぼれ出た生温かい情熱は、
発熱を繰り返しては所構わず咆哮する。
十代の終わりから二十代にかけての記憶は、
――チップス先生くらい、想い出が多すぎて――
どれも懐かしくもあり、また愛しくさえ思い出されます。
あの頃の雑然とした情熱は、
肉食獣だけに許された鋭い牙のようなものなのかも知れませんね。
佐野元春さんで、『ハートビート』。
たまらなく好きです。

