晴れ渡る空を見上げ、単車にすればよかった、と
ハンドルを握りながら会社に向かいます。
途中、小さな峠の両脇には、色づきはじめた木々が一斉に陽射しを浴びています。
素敵な一日のはじまりです。
車の中では、阿川泰子さんのチャーミングな声がライトなジャズを歌います。
はじめは女優、その後ジャズ歌手に転身。
『ウィ・ガット・メール』という交換日記のようなスタイルで、ロマンティックなスタンダードを紹介している本があります。
会社の書棚にあり、ときどき手が伸びます。
どこに転機があるのか、まったくわからないものです。
自分が追い求めたはずの場所ではなく、別の枝に思いもよらない果実が実ることもあるのですね。
それは潜在意識の中では大切に育まれていた結果かもしれません。
神田外語に通っていた頃、錦糸町の駅ビル内のトラッド・ショップでアルバイトをしていました。
店長と従業員の方、そしてときどき私です。
漠然としていた思いが、くっきりとした輪郭をもって頭をもたげます。
駅ビル内のショップの方たちに連れられ、初めて足を踏み入れたオールディーズのライブ・ハウス。
自分が求めていた空間がありました。
轟然と響き渡る音楽。
猥雑さを煽るようにぐるぐると回るミラーボール。
フロアーを埋めるツイストの中で、ひときわ目立つジルバ。
従業員の方には、その後もよく連れて行ってもらいました。
埼玉への終電がなくなり、私の部屋に泊まってもらったこともあります。
ずいぶんよくして頂きました。
その方は、若い頃、浦和で暴走族の頭をしていたとのことです。
目の上に少しえぐれたような傷がありました。
ぽってりとした感じ。熊のイメージです。当時25歳。
いなかっぺの19歳の私には、頼りになる兄貴のような存在でした。
私の果実も、そろそろ色づいてきているのですかね。
それともまだまだ青いですかね。
今日は、社交ダンスのレッスン日です。
音楽に合わせて、フロアーを一周してみようと思います。
タンゴの次はワルツ、と先生がおっしゃっていました。
少しずつですが、前に進んでいく自分を微笑ましくさえ思います。
エリサ・フィオリロ。もともとはクラブ系かロック系の歌手です。
日本独自の企画盤なのかはわかりませんが、気持ちよくジャズを歌っています。
子供の頃、両親がよく聴いていたことで、ジャズに親しみを持つようになったとのこと。
粗さは目立つものの、とてもキュートです。
よければ是非、聴いてみてください。
大好きな『オール・オブ・ミー』や『ティーチ・ミー・トゥナイト』も歌っています。

