先日、海岸線をバイクで走り、

海の見える公園へと向かった。

 

シールドの隙間からは、生暖かい風が入り込んでくる。

気持ちよさは、まったく感じられない。

 

晴れ渡った空に、綺麗な水平線が映える。

 

海の色は、澄んだ水色に染められ、ところどころ深い緑色が混じる。

 

スロットルを握る手に力をそっと入れる。

 

エンジンがレスポンスよく応えてくれる。

 

口ずさむ歌は、『渚のカンパリ・ソーダ』。

 

 

若い頃、高速をレッドゾーンぎりぎりで延々と走っていたことを思い出す。

 

気持ちが揺れ、一向に収まらない出来事。

 

あの時は、ただ、強引にスロットルを開けていた。

 

目の前に車のテールランプを捉えると、必要以上に進路変更。

 

左手を揺らして、ドライバーに軽くお詫び。

 

結局、エンジンのシールを溶かし、オイルが噴射してしまう。

 

履いていたジーンズには黒いベタついた汚れが付着、バイクもそのままでは乗れなくなってしまった。

 

 

今は、違う。

気持ちにずいぶんと余裕ができた。

 

公園から、料理屋さんに電話を入れる。

「今日、お昼、いけますか?」

 

エンジンキーを回して、スロットルを開ける。

素晴らしい景色を堪能できる、馴染みの料理屋さんへと向かう。

 

入り口からの廊下を進み、割烹の扉を開ける。

大将の人懐っこい笑顔が、快く迎えてくれる。

「いらっしゃい!」

 

ヘルメットをカウンターの奥に預かってくれる。

 

いろんな人に、気にかけてもらっているしあわせを、

箸を口へと運びながら実感する。

 

今の瞬間を大切にしたい。

 

病魔と災害は、突然牙を剥いて、誰彼問わず襲ってくる。

抗う隙をまったく与えずに……。

 

シンディ・ローパーの『ハイスクールはダンステリア』

高校生の頃だったかな?