先日、海岸線をバイクで走り、
海の見える公園へと向かった。
シールドの隙間からは、生暖かい風が入り込んでくる。
気持ちよさは、まったく感じられない。
晴れ渡った空に、綺麗な水平線が映える。
海の色は、澄んだ水色に染められ、ところどころ深い緑色が混じる。
スロットルを握る手に力をそっと入れる。
エンジンがレスポンスよく応えてくれる。
口ずさむ歌は、『渚のカンパリ・ソーダ』。
☆
若い頃、高速をレッドゾーンぎりぎりで延々と走っていたことを思い出す。
気持ちが揺れ、一向に収まらない出来事。
あの時は、ただ、強引にスロットルを開けていた。
目の前に車のテールランプを捉えると、必要以上に進路変更。
左手を揺らして、ドライバーに軽くお詫び。
結局、エンジンのシールを溶かし、オイルが噴射してしまう。
履いていたジーンズには黒いベタついた汚れが付着、バイクもそのままでは乗れなくなってしまった。
☆
今は、違う。
気持ちにずいぶんと余裕ができた。
公園から、料理屋さんに電話を入れる。
「今日、お昼、いけますか?」
エンジンキーを回して、スロットルを開ける。
素晴らしい景色を堪能できる、馴染みの料理屋さんへと向かう。
入り口からの廊下を進み、割烹の扉を開ける。
大将の人懐っこい笑顔が、快く迎えてくれる。
「いらっしゃい!」
ヘルメットをカウンターの奥に預かってくれる。
いろんな人に、気にかけてもらっているしあわせを、
箸を口へと運びながら実感する。
今の瞬間を大切にしたい。
病魔と災害は、突然牙を剥いて、誰彼問わず襲ってくる。
抗う隙をまったく与えずに……。
シンディ・ローパーの『ハイスクールはダンステリア』
高校生の頃だったかな?

