時代を切り取ってみた時、さまざまなシーンにぴたりと適合する巧まれた産物が必ず存在します。
それらに触れた時、頭の中に――微妙な味付けを施された郷愁が――波紋のように拡がっていきます。
60年代のアメリカに憧れ、その残滓を当時の東京に見出し、佐野元春が紡ぎだす世界に自分を重ねていた頃。
『バルセロナの夜』、『ハートビート』のようなバラードに垣間見ることのできる焦燥的孤独感は、
あの頃にしか味わうことのできない特別な感覚です。
先日、観光客に写真を撮るのを頼まれました。
私は、何故かよく人に写真を頼まれます。
若いカップルでした。
しょうがないな、とファインダーを覗き込む。
二人笑顔なんですよ。
瞬時に、心象風景が脳裏を掠めます。
珍しくデジタルの一眼レフ。
オートなので、押すだけでいいとのこと。
彼氏がカメラが好きなのかな。
がんばれよ、彼氏!
そんなふうに心の中で呟きながら、シャッターを切ります。
若い時って、誰でも同じですけどね。
ただ一緒にいるだけで嬉しくて、途中は気分を盛り上げて、
最後は決まってベッド・イン。
羨ましくもキラキラ輝いて見えた二人でした。
その時、ふと頭に浮かんだのは、『想い出(霧の)のサンフランシスコ』
やはりこれは、男性版のほうがぐっときますね。
トニー・ベネットです。
来週は、初レッスン。期待に胸が膨らみます。
先生は、A級とのこと。すごい方なんでしょうね。
私には、そういうクラスのことはまったくわかりませんが……。

