オンライントレードの隆盛と東証のシステム不安。 | 国憂い人のつれづれ日記

オンライントレードの隆盛と東証のシステム不安。

 今日、インターネットのニュースで、野村ホールディングスがネット専業証券を設立するという記事が出ていた。昨今のオンライントレードの激増はしばしば取り沙汰されている。株式ブローカー業務はきわめてインターネットとの和合性が高く、ネットの普及とともにオンライントレードが個人投資家の株式売買の主流を形成するにいたったのだが、ペイオフ実施・低金利そして、高齢化による資金余力のあるリタイア世代の増加によって株式投資人口の増加と相俟って、証券取引所における約定件数の爆発的増加をもたらした。その結果、東証のシステムがダウンするといった思わぬ事態が発生するようになった。

 

 オンライン証券は、ネット株式取引の性質から他社との差別化が極めて困難で、薄利多売とならざるを得ない。そのため、バブル期では考えられないほど委託売買手数料は安くなった。それにより、1円の利鞘でもキャピタルゲインが得られるようになり、デイトレードが個人投資家の間でも、十分に魅力的な投資手法となった。手数料の低下のみならず、源泉分離課税の廃止によって、デイトレードに限らず短期での売買益を狙う投資家が増加したことが、投資人口自体の増加よりむしろ、約定件数の増加の主因といえるのではなかろうか。


 東証はシステムを強化し、約定処理能力を向上させる方針だが、約定増加に対応しきれるのだろうか。また、システムダウンのようなことが起こったらどうなるのだろうか。政府は、個人投資家の短期回転売買を規制しようとするだろうが、売買注文こなしてナンボのオンライン証券は死活問題ゆえに猛反発するだろう。難しい問題である。諸外国の証券取引所の注文処理システムは、受けた注文を分散処理するようにできているが、東証のシステムは一箇所に集めて処理する仕組みとなっている。情報分散処理システムだと一部分に問題が生じても、他の部分で情報を処理していくことができる。しかし、情報集中処理システムは肝心の所にトラブルが起こると作動不能となってしまう、極めて重大な危険性をはらんでいると言える。いうなれば、東証の集中処理システムはかつての大艦巨砲主義であり、諸外国の分散処理システムは航空主兵論と言えよう。旧態依然とした時代錯誤の大艦巨砲主義が、航空機の攻撃の前に脆くも崩壊していったことは歴史が示す通りである。世界三大証券取引所の1つとしての地位を保つために、東証は応急処理的に処理能力を増強するとともに、早急に情報処理システム自体の刷新を図らねばならないだろう。