ラルス16世の声が響いた。
ラルス16世は、ここラダトーム城の城主。
そして、かいんというのが、勇者ロトの子孫。
「そなたの来るのを待っておったぞ。」
ラルス王とかいんは、会うのははじめてだったが、
その血脈には、因縁浅からぬ関係があった。
それこそが、まさしく、
勇者ロトとその称号を授与した者、という関係。
ラルス1世の時代の話なので、
もう15世代も前のことである。
その昔、勇者ロトは、
神から光の玉を授かって魔物を封じ込めたのだとういう。
しかし、竜王という悪の化身が現れて、
今また光の玉を奪い、闇に封じたのだという。
「勇者かいんよ!竜王を倒し、その手から光の玉を取り戻してくれ!」
ラルス王はそう言って、
かいんに少しばかりのお金と松明と魔法の鍵を与えた。
しかし、その渡し方はややこしいもので、
手渡してではなくて、わざわざ宝箱の中に入れてある。
魔法の鍵の宝箱など、
玉座の裏側に置いてあった。
玉座の裏側からは、入口の扉がまったく見えない。
まったく見えないが、
宝箱を開けているときに、
扉のほうから、なにやらカチャカチャと音がするのが聞こえた。
鍵を手に入れたかいんが扉から出ようとすると、
扉には鍵がかかっていた。
さっきこの扉から入ってきたのに、
出ようとすると、もう鍵がかけられているとは。
しかも、玉座の後ろに回った隙に。
なんて面倒なことをするのか、ここの王様は。
かいんが振り返ると、
ラルス王はなぜか満足そうな顔をしている。
「また会おう、勇者かいんよ。」
サプライズ好きのバカ王め!
かいんは毒づいて、
鍵を開けながら舌打ちをして、王室を後にした。
勇者ロトの本名は、
オルテガであるという説と、
かいんであるという説がある。
どちらも、かいんの先祖である。
というよりも、
かいんの血族には、オルテガとかいんしかいない。
初代オルテガは息子にかいんという名前をつけた。
そして、その初代かいんは、
なにを思ったか、自分の息子に、父親と同じ名前をつけたのだ。
なにを思ったか、というか、
敬愛しすぎた、ということなのだろう。
きっとそうなのだろう。
以来、かいんは息子にオルテガと名前をつけ、
オルテガは息子にかいんという名前をつけ続けた。
かいん、オルテガ、かいん、オルテガ、ときて、
そして、今、勇者ロトの血を引くかいんがいる。
オルテガの子孫のかいんであり、かいんの子孫のかいんである。
ラルス王が15代経ていることを考えると、
オルテガかいんスパイラルも、
きっと15代ほど続いているのだろう。
もちろん、現かいんの父親の名もオルテガ。
チッ。バカ親父が!芸のない名前つけやがって!
かいんはまた毒づいた。
自分も息子にオルテガという名前をつけることになるのだろうか。
かいんは、ぶるぶると首を横に振る。
ない!絶対!
ダメ!絶対!
トンヌラでもゲレゲレでもなんでもいいが、
オルテガだけにはしない!
それが、現かいんの矜持である。
矜持というほどのものでもなんでもないのであるが。
ラルス王には、ローラ姫という娘がいるという。
聞くところによると、
半年ほど前に、魔物にさらわれてしまったとのこと。
魔物か。竜王なのだろうか。それともその手下か。
いや待て!身代金誘拐の線も捨てきれない!
王族の娘がさらわれているのだ。
金銭目的以外の可能性があるだろうか。
竜王の犯行に見せかけて、
魔物を使った人間の仕業かもしれない。
いや、身代金を取るのだから、
竜王の犯行に見せかけてはいけないのか?
かいんは財布を広げた。
さっきもらった120ゴールドが入っている。
勇者が王に貰うお小遣いは50ゴールドが相場である。
とは言え、世の情勢というものもあり、物価が違うこともある。
実際、町の武器屋を覗いてみたら、
棍棒と布の服しか買えなかった。
勇者の装備とは思えない。
僧侶じゃねーか!
かいんはまたまた毒づいた。
どうせなら、
身代金でバカ王に65535ゴールド請求してやりたいぜ!
かいんがラダトームの町に行ったときに、
姫ファッションをしている娘がいた。
ローラ姫に違いない。と、かいんはすぐに思った。
誘拐でも身代金でもなんでもなく、
もう問題解決なのかもしれない。
そう思って姫に近付くも、
悪態をつく割りに内気で無口なかいん。
無口人にも便利ないいねボタンがあるわけでもなく、
かいんがぎこちなく姫に向かい合った。
いや、向かい合うのは緊張するので、
横並びになって東向きに話しかけた。
「いーえ、私はローラ姫じゃないわ。」
くそ!このバカがっ!
紛らわしい服装するんじゃねぇ!
果たして、
かいんは平和を取り戻せるのであろうか。
つづく。
かいん:レベル1
ばあぜよれ ぶうにははむぞ でぶいかこ ようぬ
棍棒、布の服、竜のウロコ
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