結局、城に入れてもらえることはなく、
ローラ姫を抱えたままガライの墓へと再び潜った。
1度目と同じ道を進んで行くと、
1度目と同じ場所に宝箱があり、
1度目と同じ呪いのベルトが入っていて、
1度目と同じように装備をしてしまう。
しまった!
2本のベルトを交差するように、
2重に斜め掛けするなんて、
ちょっとオシャレしましたよ、
と、言わんとしているみたいじゃないか!
俺は硬派だ!
そんなチャラい格好をするつもりもないし、
オシャレコンテストに出るつもりもない!
そう思うかいんではあるが、
呪われているものは外せない。
道具屋で聞いてみても、
「それなら180ゴールドで買いますが、呪われていますね、残念です。」
などと言われる始末。
もちろん、もう1本のベルトも呪われているので、
道具屋は同じことを言い、
結局、
かいんは2本のベルトの呪縛から、
逃れることはできなかった。
くそっ!
これじゃ単なるチョイ悪じゃないか!
チョイ悪勇者に怒った王様が城に入れてくれない、
ような風に見られてしまうじゃないか!
しかも、
気のせいか、
1本ベルトのときよりも、
さらに敵と遭遇しやすくなっている気さえする。
倍速ダブルエンカウントだ!
などと思っていると、
倍の倍でバイバイですね、
という表情でローラ姫が見ている。
あまりおもしろくないな、
としか言えないじゃないか。
言わないけど。
そうこうしているうちに、
ガライの墓の奥に安置されていた銀の竪琴を発見し、
それを持って、
マイラの北西のもうろくジジイ2のところへと足を向けた。
ジジイ2は、
約束のとおり銀の竪琴の代わりに雨雲の杖をかいんに渡す。
かいんは雨雲の杖を手にした。
これか。
これが雨雲の杖か。
太陽の石と雨雲の杖。
太陽と雨が合わさる時がついに来たのだ。
これでロトと同じように、
虹の橋を渡って竜王の城へと行けるのだ!
いや、
橋さえ架ければ、
あとは王様がなんとかするだろう。
だって、俺が自分で行くのとか怖いし。
ていうか、俺、チョイ悪だし。
危ない橋渡るのとかマジ勘弁。
そもそも虹の上を渡ったら、
それだけで危なさそうだし。
フツー落ちるし。
かいんは太陽と雨を持って、
意気揚々とリムルダール南の聖なる祠へと足を運んだ。
の途中で、リムルダールの町にも寄った。
入り口の娘が、以前と変わらず、
「ぼうや、ぱふぱふなら50ゴールドだよ。」
などと言っている。
「ぱふぱふ」とは何か存じ上げませんが、
私とかいん様ふたりなら100ゴールドですかしらね?
という目をローラ姫が向けるので、
「お前はそれがどんなものか知らないで言っているんだろう!?」
という顔をして見せた。
「では、かいん様はどのようなものかをご存知なのですか?」
というローラ姫の心の声が聞こえた気がしたかいんは、
「いいか!知らないなら教えてやる!知らないことを知らないと理解できていることが知っているということなのだ!」
と言い放つような視線を送る。
すると、
「それは、つまり、かいん様も知らないということでしょうか?」
と言わんばかりの表情をしたので、
「知らないんじゃない!知らないことを知っているんだ!」
と強気の視線を叩きつけた。
結局は、誰も何もわかってはいなかった。
どうでもよい視線の押し問答を続けながら、
ふたりは、聖なる祠へと辿り着く。
太陽の石と雨雲の杖を見せて、
さあ、これでどうだ!
と言わんばかりのかいんを
しかし祠の老人はまたしても愚か者呼ばわりをした。
「真の勇者なら印があるはず。」
と言うのである。
印!?
印だと!?
太陽と雨が合わさった上に、
俺が勇者だという証拠品が必要だというのか!?
このローラ姫を見ても証拠にならないというのか!?
ローラ姫の指紋とDNAと、俺の指紋とDNAを
全部鑑定してみやがれ!
と、言うよりも早く、
老人の喝によって祠から追い出されたかいん。
老人のニックネームは、
当然、もうろくジジイ3となった。
太陽と雨が合わさった今、
俺が勇者だと証明できるものがこの世の中にあるのか?
城にさえ入れれば、
王様が証明してくれるのかもしれないが、
今やチョイ悪で勘当されている身。
この姫をもってして勇者と証明できないとするならば、
もはや俺には自分の身分を証明できるものなどない。
そう考えたときに、
かいんは、
まだアレフガルドには未知の部分があることを思い出した。
ガライの町から南に、
ドムドーラという町があったのだ、
と、カベノミクスのところで聞いたのだ。
それに、
妖精の笛を手にしたならばメルキドへ行け、
と、誰かに聞いたような気もする。
そうだ!
思い出した!
俺はキム皇も探しているんだった!
ドムドーラ、メルキド、キム皇。
俺にはまだまだ探すべきものがある。
はじめ、3種の神器のひとつは冷蔵庫で、
その中に入れるべきものがキム皇だと思っていたが、
太陽と雨が合わさった今、
残るひとつの神器が勇者の印であるのだとすれば、
キム皇というのは、
俺が思っていたものとは違うのかもしれない。
そう。
例えば、人の名前なのかもしれない。
そして、
キム皇こそが、
俺が勇者だと証明してくれる人物なのかもしれない。
やはり、
俺はキム皇を探さなければならない。
とにもかくにも、
南のドムドーラへと進むしか道はない。
ガライから南下して、
砂漠へと差しかかろうかというときに、
かいんの前に、鎧の騎士が立ちはだかった。
フン!出たな!俺のニセモノめ!
呪いの騎士かいんは、
鎧の騎士に向かって剣を構えた。
一方、鎧の騎士のほうは、
姿見からは肉弾派だと見えていたのに、
なんとマホトーンを使って、
かいんの呪文を封じ込めた。
バカな!と、かいん。
向こうのほうが賢いじゃないか!
これじゃ、俺のほうがニセモノみたいじゃないか!
いや、違う!
俺はニセモノじゃない!
断じて違う!
俺が本物なんだ!
いつの間にか呪いに誇りを持っていたかいんは、
呪文を封じられても、
そのプライドのせいで、
逃げるに逃げられなくなっていた。
薬草を食べながら一剣一拳の完全なる肉弾の勝負。
鎧の騎士の拳を鉄の盾で受けるかいん。
の手の中に守られているローラ姫。
邪魔だバカヤロー!と、かいんの心の声。
俺の盾の内側に隠れるんじゃねぇ!
お前が俺の盾になれ!
城にも入れず、勇者の証明にもなれない役立たず王女!
なんだかんだと毒づきながら、
薬草を6枚すべて使った末に、
ニセモノを倒して本物の座を守ったかいん。
レベルも13になり、ルーラも覚えた。
とは言っても、
ルーラでラダトームへ戻っても、
城へは入れないのではあるが。
かいんは、また薬草を6枚仕入れた後、
ついにドムドーラの町へと足を踏み入れた。
ところが、
ドムドーラは、すでに廃墟と化し、
魔物に占拠されてしまっていた。
1歩歩いただけで魔物が現れた。
スターキメラ。
普通のキメラでも怖いのに、
そのスターだというのだから、怖くないわけがない。
当然のように逃げ出そうとするかいんだったが、
スターは、
せっかくの来客を逃すようなことはしなかった。
かいんがどの方向に逃げようとしても、
スターは逃げ道に回り込み、
結局、6枚あった薬草は底を尽き、
逃げ場のないかいんは、
ついにはスターのクチバシによってチカラ尽きた。
そして、目を覚ましたときには、
いつものように、
ラダトーム王ラルス16世の前にひざをついていた。
ラルス王はもはやお馴染みの台詞でかいんを叱責した。
「死んでしまうとは何事だ!」
お叱りは受けたものの、
城に入れてもらえた嬉しさから、
えへへ、すいません、
とでも言おうとした矢先に、
「しかも呪われているではないか!出て行け!」
と王は言い、
かいんは、
あっという間に城の外へと追い出されてしまった。
なんてことだ。
結局追い出される上に、
5817ゴールド入っていたはずの財布の中身が、
2908ゴールドになってしまっている。
それでいて、
HP1という瀕死状態のまま城から追い出されてしまった。
くそっ!あのバカ王!!
大事なことなので2回言った。
あのバカ王!!
ところで、
さっきまで一緒にいたローラ姫も、
今、瀕死のかいんの傍らにはもういない。
それもそうだろう。と、かいんは思う。
王女のほうは呪われてはいないのだ。
俺が死んだドサクサで、
ローラ姫のほうだけ城へと戻れたんだろう。
まぁ、それはそれで構わない。
どうせ邪魔だったんだ。
その日はラダトームの町の宿に宿泊した。
次の朝、宿の亭主から、
「昨日はよくお休みでしたね。」と言われ、
久しぶりに1人でよく眠れたような気がした。
楽しくもないのに、お楽しみでしたね、
などと毎回言われるのに辟易としていたところだ。
ローラ姫から解放されたかいんであるが、
呪いから解放されたわけではない。
そして、
ドムドーラの探索を諦めるわけにもいかない。
それでいて、
ドムドーラの敵は強すぎて、
今のままの強さでは、
ニセモノの騎士やスターに、
また痛い目を見せられることは目に見えている。
7700ゴールドの魔法の鎧を買おうと貯めていたお金も、
一気に半分になっている。
くそっ!
またガライの墓荒らしでもして稼いでやる!
と意気込んで、
1度は探索を終えたガライの洞窟へと再度赴き、
そして、死霊の騎士に出会い、
やられて、また死んでしまう。
貯めようとしていたお金は、
3420ゴールドから1710ゴールドへと減った。
死んでしまって呪われてるとは何事か、
と2度目の追放をされ、
また、HP1でラダトームの宿屋に泊まり、
また、よくお休みでしたね、と言われた。
よく休んではいるが、
貯めようとしているお金は減る一方だ。
くそっ!
いったい誰だ!?俺の金を取っている奴は!?
かいんは、ふと頭を巡らせた。
何故俺は何度死んでも生き返れるんだ?
何故いつも金を取られるんだ?
何故それが常に所持金の半額なんだ?
その疑問に対して、
ひとつの答えが閃いた。
それは、とても恐ろしい想像だった。
ラダトーム王と竜王が内通している、
というものである。
俺は自分が死んだと思っていたが、
スターは、気絶した俺にトドメを刺さなかったんだ。
その代わりに、上司である竜王に報告した。
「勇者を仕留めましたが、息はあります。いかがしましょうか?」と。
そこで、竜王は、
瀕死の俺の身柄をラダトーム王に引き渡す代わりに、
俺の所持金の一部を奪う。
ラダトーム王もまた、俺の所持金の一部を奪う。
その奪う合計額が、
ちょうど俺の所持金の半額になるように、
調整して打診し合っているのだ。
そんなことをして、
ラダトーム王はともかくとして、
竜王にどんな利益があるのか。
その答えはこうだ。
俺がまた旅を続けるように、だ。
すべての金品と装備や道具を奪ってしまっては、
もはや旅支度ができない俺は、
冒険をやめてしまうかもしれない。
一見、そうなると竜王は都合が良いように思えるが、
実際は逆で、
俺が洞窟などで集めたゴールドを
半額ずつ何度も奪うほうが、
合計額が多くなるのだと読んでいるのだろう。
生かしておいた方が得、ということだ。
俺は、竜王が得をするために生かされているわけだ。
先を見据えて、合計額が多くなるように、
調節しながら、俺はゴールドを奪われている。
少な過ぎず、多過ぎず。
謙虚過ぎず欲張り過ぎず。
くそっ!
それでいて、
この方法の巧妙な点はそれだけにとどまらない。
俺がこのことに気付いたとしても、
俺は旅をやめることはできない。
竜王!
俺はお前の首を落とさずには気が済まない!
いいだろう。
お前の作戦に乗ってやろう。
そして、
身ぐるみ剥がずに生かしておいたことを後悔させてやる!
とは言え。
今のは単なる俺の推測。
想像の域を出ない。
何か、この仮説を裏付ける証拠はないものか。
ある。
ローラ姫の所在だ。
もし、仮説が間違っているのなら、
ローラ姫はラダトーム城にいるだろう。
俺は呪われていて追い出されたが、
ローラ姫は呪われていない。
はじめに考えたとおり、
姫は王のもとにいることだろう。
しかし。
いま考えた仮説が正しいとするならば、
ローラ姫は1度俺を仕留めたスターの手に渡っている。
つまり、竜王の手に渡っていることになる。
竜王は、1度はローラ姫をさらった者であり、
俺が洞窟から連れ出さなければ、
いつまでも幽閉し続けていたはずだ。
つまり。
俺の身柄はラダトーム王に渡したとしても、
ローラ姫の身柄を渡すことはあり得ないということだ。
竜王にとって都合が良いことに、
俺が姫を助けたことをラダトーム王は知らない。
ローラ姫を助けて以来、
ずっと新参兵士によって堰き止めされていたのだから。
すなわち、
ラダトーム王と竜王の間の交渉条件に、
ローラ姫のことは持ち上がり得ない。
持ち上がるのであれば、
俺が旅を始める前に、
すでに取り引きが完了していたはずだ。
ならば。
再び奪い返したローラ姫を
竜王はどうするだろうか。
わかりきっている。
また洞窟に幽閉するに決まっている。
だから、
俺がマイラの南の、沼地の洞窟に行き、
そこにローラ姫がいるかいないかで、
俺の仮説が正しいか間違っているかがわかる。
かくして、
かいんは、その仮説の裏付けを取るべく、
1度ローラ姫を助けたその場所へ再度赴き、
またローラ姫と会うことになった。
かいんの仮説が、
完全に裏付けられた結果であると言える。
しかし、
そこにローラ姫がいたことがわかっただけで、
かいんには十分である。
証拠が出て、
かいんの疑問が解決しただけで十分である。
助けてもどうせ城へは入れないし、
冒険に連れていけば邪魔になること間違いなし!
だと思っているのだから。
かいんが、
確認だけして返ろうとすると、
ローラ姫は、
「お城へ連れて帰ってくれますね?」と言う。
「いいえ。」というのがかいんの答え。
「そんな、ひどい。」と言うローラ姫に、
かいんは激昂しそうになった。
ひどいのはお前の親父だろう!と。
お前を城に入れないばかりか、
こともあろうに、
お前をさらった竜王と内通してるんだぞ!と。
しかし、
それでも諦めずに、
何度も何度も連れて帰ってくれと言うローラ姫に根負けして、
ついにかいんは「はい。」と言ってしまうことになった。
しぶしぶという顔で、
かいんはまたローラ姫を抱き上げた。
2度目でも頬を赤らめたローラ姫が言う。
「嬉しゅうございます。ぽっ。」
「ぽっ」じゃねーよ!
コンパクトカーでもミニバンでもない自動車のCMのハト人間かっ!
かいん:レベル13
鋼の剣、鋼の鎧、鉄の盾
重要アイテム:太陽の石、雨雲の杖、妖精の笛、ローラ姫
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