6年ぶりの新作長編小説。
全体は3部構成で原稿用紙1200枚の大作。
珍しく 「あとがき」 がついていて、
この小説の核となったのは、1981年に文芸誌 「文學界 」に発表した 『街と、その不確かな壁』 という中編小説だが、内容的に納得がいかず、書籍化しなかった。
しかしこの作品には、自分にとって何かしらとても重要な要素が含まれていると感じ続けていと、
と書いている。
この中編は1985年に 『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』 で一度リライトされているが、
40年が経過した2020年初め、“もう一度、根っこから書き直せるかもしれない” と感じ、新型コロナウイルス感染拡大直後の3月から書き始めたという。
村上春樹の作品世界の原点に立ち返る、ということか? 村上春樹ももう74歳、本作が村上作品の集大成ではないか?
ま、そういうことで、
僕としてはここはじっくり読まなければと、
切りのいい所で少し戻って読み返し、また先に進み・・・を繰り返して読んだ (即ち、2度読んだことになる。)
また読後に、
文芸誌 「新潮」 6月号の特集 「七つの視座で読む村上春樹新作」(安藤礼二、小川哲、小川洋子、小沢健二、最果タヒ、沼野充義、吉本ばななの7氏が投稿) や、
毎日新聞の書評 (鴻巣友季子、橋爪大三郎が投稿)を読み、
同紙5月28日付けの 「村上春樹さん単独インタビュウ」 にも目を通したりして、理解を深めたつもり・・・
「現実世界」 ともう一つの世界 「高くて強固な壁に囲まれた街」・・・そこでは
人は影を引き剥がされ、金色の毛に覆われた 「単角獣」 が唯一生存し、時計台には針のない時計。 書庫には、本ではなくて <古い夢> が積み上げられた図書館が!
現実の自分と影、現実の世界と死の世界
“生と死” ・・・それが対立するものではなく連続している、あるいは揺らいでいる?
さて、自分は今どこに居るのか?