堅いタイトルを付けてしまいました。
内容もちょっと堅めです。
『住宅業界への不満』というか、そんな内容です。
思うがままに書いていきます。
ほぼ愚痴です
■素人vs.プロ
人生の中で1千万を超える買い物なんて、普通の人は
『家』の購入以外に経験しない。
成功させたい。
失敗したくない。
満足のいくマイホームを手に入れたい。
誰もがそう思っている。
なのに、なぜ巷ではトラブルや裁判が絶えないのか?
(こういう類の専門書は色々と発行されており、深刻な方はそちらを
ご覧ください。ここで逐一書いたら膨大な量になってしまいます。
この記事で述べるのは、僕の家作りを通しての感想のようなものです。)
車にせよ電化製品にせよ家具にせよ、高額な買い物において
購入者は販売者に対して説明を求め、納得して購入に至る。
住宅は、そこがまず難しい。
一品生産であるが故の品質のばらつき。
施工者次第、天候次第、担当者次第…。
そんな様々な条件がくっついてくる。
そして説明しきれない専門用語。
例えば「コンクリート」1つとっても、とてもじゃないが素人の方に
数時間説明して理解させるなんて不可能に近い。
契約段階で、素人の方で100%理解して納得している人はいない。
「なんとなく大丈夫そう。」
そこからスタートしている。
家作りにおいてトラブルが絶えない大きな理由の1つは、
『素人である施主の本当の味方がいないこと』
だと思う。
現場を見て「あれ?こんなんでいいの?」
と思った時に適切なアドバイスができる人を、
家作りをする人すべてに付けられたらいいのに。
でもそれだって難しい。
建築士の資格を持っていても、知識量や技術レベルには
とてもばらつきがあるんだし。
家作りにおいては、素人が簡単な理論武装をしたところで
プロには勝てない。
「なんとかかんとかなので、大丈夫です」
「建物の性能には影響ありません」
そうやって建ってしまった家がどれだけあるだろう。
設計事務所、ハウスメーカー、工務店などの
会社の組織体制や担当者の誠実さに、
建物の品質が大きく左右されてしまう。
もっと誰もが安心して、いい家作りができるように
ならないものかなぁ。
■欠陥建築はあり得ない?
理屈をこねれば、欠陥建築は生まれないはず。
なお、いたずらに「欠陥」という言葉は使いたくない。
修復可能な施工不良は、欠陥とは違う。
昨今は「欠陥」という言葉が氾濫し過ぎている。
建築基準法(以下、関係法令も含めて「法」と略す。)による、
一般的な建築の流れは、こう。↓
設計者が、法にのっとった設計をする。
↓
確認申請を行い、法的に問題がなければ確認済証が発行される。
(素人には申請業務はできないので、通常は代理者が行う。)
↓
施工者が、確認申請の図面・書類にのっとって工事をする。
↓
監理者が、確認申請の図面・書類通りに工事が行われているかをチェックする。
↓
完了検査を行い、法的に問題がなければ検査済証が発行される。
↓
施工者から建築主に建物が引き渡され、使用可能になる。
システム自体は完璧に見える。
法的にOKな建物の仕様で工事してチェックして検査してOKなら引き渡す。
姉歯事件は、①~②の段階における設計図や確認申請書類の偽装が
問題になり、おかげで確認申請の手続は厳しくなった。
(これはこれで色々と言いたいことがあるが、割愛。)
違法な建物では建築確認は下りない。
完璧に見えるシステムのどこに問題があるのか。
まず第一に、適切に施工されることが重要なのは言うまでもない。
③の段階で何も問題がなければ、④も⑤もたいして重要ではない。
(建物の性能としては、という意味であって、完了検査は必要。)
問題なのは、③の段階で起きてしまった問題を、④の段階で
素通りしてしまうことだと思う。
⑤の段階ではすでに建物は完成しているのだから、
この後で対策を講じるようでは遅い。
④の段階で起きた問題を、指摘するべき人間は誰か?
素人である建築主ではない。監理者だ。
■建築に関わる人
確認申請書の第二面は、「誰が関わったか?」を示す欄になっている。
第二面の大項目だけ抜き出すとこう。↓
【1.建築主】
【2.代理者】
【3.設計者】
【4.建築設備の設計に関し意見を聴いた者】
【5.工事監理者】
【6.工事施工者】
【7.備考】
1.は説明不要、施主のこと。お金を出す人。普通は素人。
2.は代わりに申請する人。一般的には設計者。
3.はそのまま、設計者。一般的には役職付の代表の建築士。
4.は、設備担当。「聴いてない」なら記載がなくても可。
5.…後述。
6.は、実際に施工する工務店の名前が出る場合と、
大元のハウスメーカーの名前が出る場合がある。
7.はおまけ。
■工事監理者って誰だ?
「監理」を辞書で調べると、
監督・管理すること。とりしまること。
と書いてある。
その通りだが、建築業界における「監理」と
いう言葉としては、いささか説明不足だ。
建築士法第2条では、こう定義されている。
工事監理とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが
設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。
監理とは別に、管理という言葉も存在する。
というか、普通に使われるのは「管理」の方。
「工事管理」は施工者が現場を運営する業務で、
いわゆる現場監督がそれを行う。
つまり、監理は建築士が行い、管理は現場監督が行う。
ハウスメーカーや工務店を中心とする戸建住宅業界では、
この「監理」が機能していないところが多い。
それもそのはず、不具合を細かいところまで自分で見付けたら、
自分で手直ししなければならなくなってしまうからだ。
たまに顔を出すだけの施主(素人)が指摘できることは限られている。
ということは、ちゃんとしたチェック体制を持たない会社や担当者に
おいては、ちゃんとした品質の建物かなんて誰にもわからない。
■一般建築は?
マンションや事務所ビルなどの大きな建築においては、
組織的な設計事務所が設計とともに監理を行うのが一般的。
設計事務所の業務内容として、
“うちは設計はやるけど監理はやらないよ”
なーんてところはほとんどない。
『設計・監理』がほとんどセットになっている。
監理とは、現場をブラブラ見学することではない。
既に書いた通り、監理はチェックすることが基本的な仕事だ。
杭・鉄筋・コンクリート・鉄骨などの構造部材は非常に重要なので、
現場立会はもちろん、施工計画書・コンクリート配合報告書・
施工結果報告書などの書類も、配筋図や鉄骨製作図などの
図面もかなり細かくチェックを行う。
建具や仕上などもしっかりと確認し、現場の不具合は指摘して
是正させ、是正報告をさせたり現地確認をする。
施主から急な変更が求められた場合、法的に、機能的に、
コスト的に、また施工上の問題ないかなどを即座に検討する。
とても内容は書ききれないが、監理とはそういう仕事。
学生時代に、大手の設計事務所から独立した方の元で
アルバイトをした。
その所長さんに言われたことが、今でもとても印象に残っている。
「設計事務所の人間は、施工者側になるな。施主側の人間になれ。」
実際に業務を行うと、その意味が身にしみて分かる。
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話を戸建住宅に戻す。
監理がしっかりしていれば、欠陥建築が激減する、
なんて簡単な話ではない。
第三者の監理となると費用もかかるし、「監理だけの仕事」は
とてもやりにくい。
図面には全ての設計意図が表現されているわけではない。
特に住宅業界では、明らかに図面が少なく、工務店の経験に
ゆだねられる部分が多々ある。
でも少なくとも、素人である施主にもっと優しい業界で
あるべきではないか。そうあってほしいと願う。
長めの愚痴にお付き合いいただきありがとうございました。