「家を建てよう!(買おう)!」と思い立ったとします。
資金計画については今回はちょっと横に置いておくとして、
どのぐらいの広さの家が必要か、わかりますか?
戸建かマンションかはここでは問いません。
(主に戸建の方を対象とした文章になりますが。)
今回はそんな、“家の広さ”に関するお話です。
なお、僕は「建てる」と「買う」を必ず使い分けます。
「建てる」は注文住宅、「買う」は分譲住宅。
注文住宅を建てるor建てた方は、
家の広さを決定する主導権は自分達が持っています。
家を買うor買った方は、
事業者が建てた家の中から、適切な広さのものを選択します。
どちらにしても、必要な家の広さというのを知っていて
損はないと思いますが、いちいち両方書くのも面倒なので、
この記事は「建てる」で統一します。
■居住人数は?
だだっぴろい土地とあり余るお金を持っている人は、大物芸能人や
ハリウッドスターのように好きなだけ部屋を作れば良いでしょう。
10LDKとか。きっと自分で掃除なんてしないだろうし。
(まぁそんな人はそもそも絶対こんなブログ見てない。)
一般庶民の家の間取りは2LDK~4LDK程度、
建てる時点での想定居住人数は、大抵2~5人でしょう。
2世帯だったりしたらもっと多いし、単身者で建てる方もいます。
この人数想定に合わせて、適切な規模で設計は行われます。
大きすぎては不経済だし、小さすぎては住みにくい。
しかし家族構成は変わります。
子供が生まれたり、家を出たり、誰かを引き取ったり、
亡くなったりして、家の居住人数は変化します。
この変化は、30~100年の家の寿命よりもめまぐるしく起こります。
人が減る分には、その分広く使ったり、使わない部屋を残しておいたり
しても構わないでしょう。
人が増えた時に、その家のキャパシティが何人ぐらいか、というのを
ある程度想定しておいた方が良いのではないかと思います。
■ちゃんとした基準
でもキャパなんてあるのでしょうか。
「○男□女 大家族計画」みたいな番組でもなんとか生活してますよね。
そもそも家の広さの基準ってあるのでしょうか?
あるんです。ちゃんとした基準が。
その名も「住生活基本法」。2006年6月 8日に公布・施行されました。
前身には、「住宅建設計画法」というのがあり、こちらは廃止されました。
住生活基本法は、全部で22条しかない一見薄っぺらい法律ですが、
「基本法」というだけあって、住宅の有り方・方針・理念といったものを
指し示す重要な役割があります。
必ずしもそれ以上の広さの家を作らないといけないというのではなく、
「このぐらいの広さに住むことが望ましい」という基準を設けています。
住生活基本法に則って定められるのが、『住生活基本計画』。
やっと出てきました、本日の主役です。
住生活基本計画について詳しく知りたい方は、そのまま検索にかければ
出てきます。
■居住面積水準
『住生活基本計画』の中には「誘導居住面積水準」と「最低居住面積水準」が
あり、「誘導居住面積水準」はさらに“一般型”と“都市居住型”の2つに
分かれています。
ここでは3つ並列して書きます。
一般型誘導居住面積水準
(都市の郊外及び都市部以外の一般地域における戸建住宅居住を想定)
①単身者 55㎡
②2人以上の世帯 25㎡×世帯人数+25㎡
都市居住型誘導居住面積水準
(都市の中心及びその周辺における共同住宅居住を想定)
①単身者 40㎡
②2人以上の世帯 20㎡×世帯人数+15㎡
最低居住面積水準
(健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準)
①単身者 25㎡
②2人以上の世帯 10㎡×世帯人数+10㎡
こんな注釈がありますので一応記載しておきます。↓
注1 上記の式における世帯人数は、3歳未満の者は0.25人、
3歳以上6歳未満の者は0.5人、6歳以上10歳未満の者は0.75として算定する。
ただし、これらにより算定された世帯人数が2人に満たない場合は2人とする。
注2 世帯人数(注1の適用がある場合には適用後の世帯人数)が
4人を超える場合は、上記の面積から5%を控除する。
注3 次の場合には、上記の面積によらないことができる。
① 単身の学生、単身赴任者等であって比較的短期間の居住を前提とした
面積が確保されている場合
② 適切な規模の共用の台所及び浴室があり、各個室に専用のミニキッチン、
水洗便所及び洗面所が確保され、上記の面積から共用化した機能・設備
に相当する面積を減じた面積が個室部分で確保されている場合
各区分の趣旨をやや強引にまとめると、
地方戸建用
都市戸建用・分譲マンション用
賃貸用
だと僕は認識しています。(詳しくは書いてありません。)
この基準に従うと、想定する人数と広さの関係はこういうことになります。↓
[人数]
2人暮らし … 75㎡ 55㎡ 30㎡
3人暮らし … 100㎡ 75㎡ 40㎡
4人暮らし … 125㎡ 95㎡ 50㎡
5人暮らし … 143㎡ 109㎡ 57㎡
6人暮らし … 166㎡ 128㎡ 67㎡
我が家は約85㎡(26坪)。都市戸建用としては3~4人用。
地方の基準からしたら、2~3人用住宅です。
■手っ取り早い算出方法
略算としては、1人8坪(=約26.4㎡)と言われます。
しかし略算は略算。数字が大きいとズレが大きくなります。
間取りによって同じ面積でも空間は広くも狭くもなります。
二世帯の場合はどこまで共用するかで面積は全く異なります。
1人8坪という略算は、家作り計画の本当の初期の初期で、
だいたい何坪の家にしよう、という時の目安でしかありません。
■統計的には?
全国的な統計調査は5年ごとに行われており、直近の調査は平成20年です。
その調査結果によると…↓
【1住戸当たり延べ面積の全国平均】
94.13㎡(28.5坪)
【1住戸当たり延べ面積が広い都道府県】
①富山県 151.37㎡(45.8坪)
②福井県 147.99㎡(44.8坪)
③秋田県 139.84㎡(42.3坪)
④山形県 138.06㎡(41.8坪)
⑤新潟県 133.76㎡(40.5坪)
【1住戸当たり延べ面積が狭い都道府県】
①東京都 63.94㎡(19.3坪)
②大阪府 74.78㎡(22.6坪)
③沖縄県 75.90㎡(23.0坪)
④神奈川県 76.46㎡(23.1坪)
⑤京都府 86.16㎡(26.1坪)
(埼玉、福岡も86㎡台の僅差で続きます。)
なお、上記の面積は戸建もマンションも含んでいます。
建て方別に見ると、戸建:128.64㎡、長屋建:65.57㎡、共同住宅:47.92㎡。
一戸建は共同住宅の2.7倍の広さとなっています。
沖縄は例外ですが、他の都市部の1住戸当たり延べ面積が狭いのは、
集合住宅の割合が大きいためです。
上記の出所となっているちゃんとした統計資料を見たい方は、
「平成20年住宅・土地統計調査」と検索すれば出てくるでしょう。
総務省統計局の管轄です。
これだけ数字の差があると、「うちの家は30坪です」と言った場合に
広いと見るか狭いと見るか、場所によって全然違ってきそうですね。
■現実問題として…
多くの方は、家の広さは予算によって制限されます。
家作りをした方は、身にしみて分かるでしょう。
欲しい空間を泣く泣く削らざるをえなかった、なんて日常茶飯事です。
削ったスペースは、リビングだったり和室だったり玄関だったり収納だったり
トイレだったり子ども部屋だったりパントリーだったり、とにかく人それぞれです。
優先順位は自分達で決めればいいんです。
今回は、家の広さの基準についてのお話でした。