大震災と無印良品の家 | In My Life■無印良品の家

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建築士の視点から見た「無印良品の家」(木の家)の紹介を中心に、
インテリア・音楽・食べ物・旅行・日々の出来事を自由に書いています。

3月11日の地震からもうすぐ5ヵ月

被災地ではあれ以来生活が一変し、今も苦しい生活を

されている方がたくさんいらっしゃいます。


一方東京では、完全に「日常」が戻っています。


以前と違うのは、職場でエアコンを付けるのを

みんなためらっていることぐらいでしょうか。

(室温が30℃を超えたら付けています。)



最近では、普通に過ごしていたら、震災のことが

話題にのぼらない日も珍しくありません。


ところが先日、思わぬところで

震災と我が家とのつながりを感じさせられました。





■内部造作工事中の写真に…

我が家が完成したのは今年の1月29日

地震の起こる1ヵ月半ほど前でした。


現場で撮りためた写真を整理していたら、

下の写真を見つけました。

撮影したのは、さらに2ヵ月前の、2010年11月23日です。


注文住宅の建て方■無印良品の家-合板石巻工場


『 製造者 セイホク(株)石巻工場



石巻工場?



石巻って…東北の?


  ・

  ・

  ・



慌ててネットで調べたら、やはりそうでした。
(石巻って地名はそうそうないですよね。)


東北地方は、合板のシェアが5割を占めており、

その中心的な会社が、「セイホク株式会社」で、

中でも石巻工場は、

合板の国内生産の3割を占めていたらしいです。



石巻工場の立地は、石巻市の石巻湾、まさに海際に

建てられており、津波による甚大な被害を受けていました。


【震災のセイホク石巻工場】
注文住宅の建て方■無印良品の家-セイホク震災前
右側の丸印が、合板の工場。

(写真はセイホクのHP内のもの。)


            


【震災のセイホク石巻工場】
注文住宅の建て方■無印良品の家-セイホク震災後
真ん中にある湾の左下にある細長い建物。

住宅地が浸水しているのがわかる。

(写真は国土地理院が公開している航空写真。)



建物は残っているように見えますが、周辺の

状況からして津波に襲われたのは明らかです。


ただ、明るいニュースとして、セイホク(株)は先週、

震災後初めて合板の出荷を再開したそうです。




地震が起きてから数ヵ月、東北地方や関東地方を中心に、

建築業界(特に住宅業界)は一時停滞しました。

交通網は寸断され、製品や材料は入手できず、

ガソリンまでも数時間待ち。


工事の遅延やキャンセルも相次ぎました。



仮設住宅の建設を優先し、様々な建築材料が東北地方に

流れていったことも影響しているでしょう。


また、物理的な問題だけでなく、住宅業界においては

顧客の新築意欲も削がれてしまった感がありました。



■無印良品の家は?

この工場の合板が使用されているのが「無印良品の家」の

全体なのか、関東以北だけなのか、たまたまだったのか、

知る由もありませんが、それはもう過去の話ですから

気にしても仕方ありません。


別に製品は何一つ悪くないのですから。



これから新築(もしくは新築中)の方の懸念事項は、


「ところで無印良品の家って地震に対してどうなの?」

ということだと思います。


【参考までに、地震後の会社の様子】


職場のある千代田区では震度5強

僕の体感では、今までで一番大きな揺れでした。


デスク廻りは、みんなこんな感じでした↓


注文住宅の建て方■無印良品の家-デスク廻り散乱

設計事務所は紙だらけです。

申請書類やら図面やら本やら、棚の物がことごとく

落ちてきました。


片付けにうんざりはしたものの、実害はほとんど

なかったと言ってよいでしょう。


会社の外に出てみても、ぱっと見では建物の被害は

確認できませんでした。




【地震後の我が家の様子】

東京の北東部に位置する足立区においても、

観測上の記録は、震度5強

新築した家が無残な姿になっていないか心配しながら、

千代田区から2時間歩いて家路に着き…びっくり。



引き出しが開いているビックリマーク


あ、リモコンが落ちている!



それだけ?




あれ、なんともない?




嫌味なぐらい隅から隅まで見回しても、

結局本当にひび1つ見付かりませんでした。

内装の石膏ボードの継目ぐらいは

ひび割れていると覚悟してたのに。

これには、寒冷紗の施工が効いているのだと思います。

詳しくはまた、内装工事の記事で書く予定?です。


注文住宅の建て方■無印良品の家-寒冷紗


とりあえず今回の地震で、

無印良品の家(とりあえず我が家)は、

震度5強ならなんともない、ということがわかりました。


(後日外観も調べましたが、被害は全くありませんでした。)





【地震の揺れと建物の被害】

自分で書いておいて変な話なのですが、

「震度5強ならなんともない」というのは100%言える

話ではありません。


何言ってんの?と思うかもしれませんが、事実です。


震度と建物の被害との間に、ある程度の相関はあります。


でもその被害の“程度”には、様々な要素が複雑に絡み合っており、

シミュレーション通りにはいかないのが現実です。



では、同じ震度でも、被害の程度を左右する要素とは何か?

思いつくところを挙げてみます。


●建物側の要因によるばらつき


・設計が適切か

 (これは、無印良品の家においては問題ないはず。)


・施工が適切か

 (工務店次第、さらには職人次第ということも。

  施工の適切さの判断は、非常に難しい問題。)


・メンテナンスはなされているか

 (構造に影響する部分、例えば鉄筋コンクリートの爆裂や

  シロアリの被害を放置していないか、という話。)


・使い方が適切か

 (例えば想定外の荷重の家具を置いたりしていないか)


●土地の要因によるばらつき


・地盤がどうか

 (隣の家との間で地盤が違うこともある)


●地震そのものの要因によるばらつき


・揺れの特性

 (揺れの長さ、固有周期、地表面速度など)



つまり言いたいのは、同じ震度5強でも、それによって

被害の大きさは単純には測れない、ということです。


2階建よりも超高層建築物が危ない震度7もあるし、

その逆の震度7だってありえます。



実際、3月11日の地震で唯一の震度7を観測した宮城県栗原市。

岩手県に接する人口7万5千人の街です。

HPに被害状況が掲載されているので、一部抜粋します。


【人的被害】 

 ●死者:なし ●行方不明者:なし ●重傷者:6人 ●軽傷者:544人

【住家被害】
 ●全壊:52棟 ●大規模半壊:23棟 ●半壊:216棟

 ●一部損壊:3,402棟 ●床下浸水:3棟


被害がこの程度にとどまったのは、今回の地震の揺れの特性による

要因が大きかったのだと思います。



被害を受けた建物を見て、

「こういう原因で崩壊した」と推測することはできても、

「どう崩壊するか?どのぐらいの力で壊れるか?」というのを

予測するのは容易ではありません。


【とはいえ…(推測)】


ぐちぐち個別事情を話しても始まらないので、

わかりやすく、ざっくりしたお話をします。



題して、「無印良品の家」は、この震度でこうなる!


<震度>   <被害の程度>

震度5弱 … 無被害

震度5強 … 無被害

震度6弱 … ほとんど無被害、一部で軽微な被害

           (軽微な被害:補修不要で使用できる)

震度6強 … ほとんど軽微な被害、一部で小破

           (小破:補修後に使用できる)

震度7   … ほとんど小破、一部で中破

           (中破:倒壊しない、人命に危険な落下・転倒物がない)


つまり、震度6弱まではほぼ被害なし

     震度7がきても大破には達しないと思います。


     (大破:倒壊すること。)


それぐらい、「無印良品の家」のSE構法は、

かなり“信用できる”構法だと思います。