彩side
そして迎えた今日が約束の日。
待ち合わせの場所は、駅前の時計台。
いつもここが待ち合わせ場所やったな。
約束の五分前に着くのが私で、
約束の十分後に来るのが美優紀。
結局私は十五分待つはめになって
いつも美優紀に怒ってたっけ。
久しぶりに美優紀のことを待ってみたくて
五分前に来ると、
もうすでに、そこには美優紀がいた。
「やっぱり美優紀、
変わっちゃったな。」
なんて小さく呟く。
文章ではやりとりしていたけど
直接会って話すのは六年ぶりなわけで。
大きく深呼吸をし、
……よし。
「美優紀さん、お待たせ。」
はじめてやな、
美優紀に ”お待たせ” なんて言うの。
すると美優紀は、
「彩さん?」
私は優しく頷くと、
「やっぱり!同窓会の日
私目合ったもん!連絡取ってるうちに、
あの人彩さんだったのかな
なんて思ってたんです。」
「覚えてたんですね。
でも美優紀さん目そらしちゃったから…」
苦笑いで答えると、
「だってすごいこっち見てたんやもん。
恥ずかしかったから。」
なんて、膨れっ面でこっちを見てくるから
私の方が恥ずかしくなって
隠すみたいに自然と顔が俯いた。
久しぶりに近くで見る美優紀の顔は
前よりも大人っぽくて綺麗だった。
「あー、彩ちゃん照れてる!」
”彩ちゃん” また、美優紀にそう呼ばれる日が
来るなんて思いもしなかった。
きっとこの子のことやから
計算とかじゃなくて、
本能のままそう言ったんやと思う。
だから余計嬉しかった。
堅苦しかった敬語も
話しているうちに無くなって、
まるで六年前に戻ったみたいだった。
「やっぱりなんも変わってなかった。」
無意識のうちに呟いた言葉。
「え、なになに?」
私の大好きな笑顔で美優紀は聞いてくる。
「なんもない!いくで美優紀。」
今日という日が永遠に続けばいいのにな。