彩side








「百花、練習しようや。」


私と百花は、軽音部に所属している。
お互い、それなりに本気で
活動しているつもりだったが、


「おう、ええよ。」


なんて久しぶりに聞いた
私の言葉に百花は戸惑っていた。

まあ戸惑うのも無理はない。
最近の私は、部活よりも喧嘩で
やるべき事をすっかり忘れていた。





それと、誰にも言っていなかったが将来は
シンガーソングライターを目指している。






「彩ちゃん、百ちゃんどうしたん?
練習なんて久しぶりやん!」


あぁ、誰にも言ってないは嘘やった。
こいつには話したことがある。


「みるき~!今日も可愛いよ~!」



なんて、百花は美優紀に夢中。


自分では気づいていなかったけど
すごい顔で百花を見てたみたいで、


「ごめんって、取るつもりなんてないから。
美優紀は私のものやって顔に書いてあんで」


「うるさいわ。分かってるならするなよ」


顔を真っ赤にした美優紀は、
話題を変えるように


「二人とも何か歌ってや。」






美優紀の好きなあの歌を、
精一杯気持ちを込めて歌った。
油断すると百花に
負けちゃいそうで怖いから。

きっとまた、ムキになるなって
言われるんやろうけど、
百花のかっこよさには
正直勝てる自信がなかった。
喧嘩は私が勝つ自信あるねんけどな。
でもな、それじゃダメやねん。



そんなことを思っていると、


「ほな帰るわ。彩!
間違ってもみるきーに手出すなよ!」



分かってるわ。
でも百花の気遣いにはいつも感謝してる。
そう言うとこやねん、百花のいいところは。















「あ!彩ちゃんまた喧嘩したん?
ここ怪我してる。」


昨日の傷を指差しながら
心配そうな目で私を見つめる美優紀。


「もう喧嘩しちゃダメって
何度も言ってるやん。」


また美優紀を困らせてしまった。


「ねぇ彩ちゃん?
 私、確かに強い人が好きとは言ったけど
喧嘩するのは嫌やで?それなら
歌ってる彩ちゃんの方が何倍も好き。」


そう言われると
軽いため息をつき、


「わかったわかった、もうやめるよ。」


なんて笑う私。





すると、ほんと?って半信半疑で
尋ねる美優紀の手を引き、部室を出た。