彩side







「百花次行こうや。」


足元には痛みで倒れこむ、女子高生が数人。


「まだやんの?彩お前最高や。」


隣で笑う百花の顔は傷だらけで
手や服は血で真っ赤に染まっていた。



奇抜な色に染め上げられたその髪は
綺麗にセットされ、
見る人をも魅了する整った顔立ち。
男よりも男らしく
やっぱり百花はかっこいい。


私は百花を初めて見た時、
すぐ彼女に興味を持った。


そんな百花は、普通の人からすれば
近寄りがたい存在らしく
誰も興味を持とうとはしなかった。


自分からは言いたくないけど
要するに普通じゃない私は、
百花をそんな目では見なかった。


まあ、私たちは俗に言うヤンキーで
接点はそこやった。
だけど、向こうは私を真面目な
優等生だと思っていたらしい。
確かに見た目は普通やねん。
だから私が予想外な発言や行動をすると
幻滅されたり、
軽蔑的な目で見られたりする。

私は私やのにそれが本当に嫌やった。

せやから百花みたいな人が
何処か羨ましかった。











「なんや彩、怖じ気付いたんか?」




気付けば私は足を止め
その場に立ち尽くしていた。




「はぁ?何言うてんねん、
もう一回言ってみろ。」


「彩はすぐムキになるんやから。」




そうやねん。すぐムキになんねん。
でもそう言われると
もっとムキになってしまう。
きっと私はまだまだ子供やねんな。



「もうなんでもええわ。行くで」






そして向かった先はあいつが待つ場所。




そこには栄高の生徒が七、八人いて
肝心のあいつの姿が見当たらない。




「お前ら誰やねん。
私が用あるのは松井や。」


「あなた達ごときに、珠理奈さんなんて
呼べると思います?無理ですよ。」


勝ち誇ったように嘲笑う、そいつは
おそらく松井が来させた下っ端だろう。


見下されてる気分で、異常に腹が立った。

隣にいる百花も、私と同じ気持ちみたいで
怒りの笑みがこぼれている。


「それはどうも、愛知から遥々
ありがとうございました。」


その言葉を合図にいつもの如く始まった。

ものの十分もしない内に、相手は残り一人。
加減を知らない私は
力の限りそいつを蹴り飛ばす。

案の定、地面に
叩きつけられるように倒れる。


「おぉ、ちょっと彩。
まだ本気出すとこちゃうぞ。」


なんて笑う百花。


「なぁ。これで分かったか?
ここはお前らが来るとやないねん。
一生あんなこと言われへんようにしたんぞ」


今までにないくらい力強く首を絞める。

顔が真っ青になっていくのが分かった。
さすがに喧嘩以上のことになるのは
ごめんだと思い、手を離すと

 

「ほな、気をつけて帰りや。」




そう言ってその場を後にした。