彩side 








病院につき、陣痛間隔が三分を迎えた頃
美優紀の目にはうっすら涙があった。



「美優紀、大丈夫?」


腰をさすりながらそう聞くと、


「大丈夫。」


強くなりたいと言ったあの日から、
一度も涙を見せなかった美優紀。

だけど今日くらい、こんな時くらい
甘えさせてあげたかった。



そんな思いから、


「美優紀?
泣きたかったら泣いてもええねんで。
怖かったら怖いって言ったらええ。
我慢することないよ。」


つい、そう言ってしまった。
すると、


「ありがとう。
でも私は大丈夫、頑張るから。」


美優紀はそう言った。

私が知ってる泣き虫な美優紀は
もういないみたいで、
思っていたよりも強くなっていた。



















「彩ちゃん、ありがとう」


涙を浮かべ優しく微笑む美優紀は
もうすっかり母親の姿だった。

























そして、数時間後元気な女の子が生まれた。
美優紀に似た可愛らしい笑顔で、
よく笑う女の子だった。














「彩ちゃんですよ~」

「もう!今寝てるんやから静かにして」




「ご飯まだあげたらあかん?」

「さっき食べたところやん!」




「おもちゃ買ってきてん!」

「また買ってきたん?
なぁ…。それ男の子用やから!」










毎日そんな会話をしては美優紀に怒られ、
それでも懲りずにいる私は
今、幸せの絶頂期なんだろう。









なぁ美優紀?
美優紀がいてくれたから、
こんなにも優しい気持ちになれた。
初めて誰かのためになりたいって思えた。
それが美優紀でよかった。










美優紀が守り続けた、大切な宝物。



「ママはすごく強い人やねんで。」



早くそう言える日がくるとええな。






























私の二つの宝物は
今日もキラキラ輝いている。