彩side 







「絶対こっちの方が可愛い!」


「いや、こっちや!!」



なんて、もめた結果
美優紀が選んだ服に決まる。




今日はベビー服を買いに
近くのショッピングモールに来ていた。

以前から、男の子か女の子なのかは
生まれてから聞くと
決めていた以上服のことで
もめるのは仕方ないと思っていたが、
やっぱり美優紀には敵わない。



「ピンクが一番可愛い!」


「もし男の子やったらどうすんねんな」


「私の子やから、
なんでも似合うに決まってるやん。」



自信満々な美優紀は
いつになっても変わらない。



「彩ちゃん!次あっち!」


「はいはい」


両手にはたくさんのベビー服。





気づけば、いよいよ
出産間近の時期になっていた。




















そして、平日の昼ごろ
仕事中の私の携帯に
美優紀から電話があった。


「もしもし彩ちゃん? 
陣痛きたみたい。」


「え、ほんまに?
救急車呼び!救急車!」


焦る私に、


「何言ってんの、今行っても
まだ見てくれへんよ」


「え?そうなの?
まあ、なんでもええわ!すぐ帰る!」


「気をつけて帰ってきてな」








そう言った美優紀は
思ったよりも冷静だった。

助産師を目指して勉強していただけあって、
知識はたくさんあるみたいで心強かった。




「美優紀帰ったで!」


「もう、彩ちゃん声大きいよ」


「ごめんごめん。
お母さんには連絡した?」


「うん。まだ結構時間かかるみたい。」


「そっか。
じゃあえっと~、ご飯食べる?
歌、歌おうか?えっと…」


「落ち着いて、じゃあ
服用意してもらおうかな?」


「よし、わかった!待っててな!」











そうこうしている内に、
不定期だった陣痛が 三十分間隔、
二十分間隔と狭まってくるに連れ、
さっきまで余裕のあった美優紀も
少し辛そうだった。








そして不安になってきたのか、


「彩ちゃん側におって?」


なんて言うから、


「安心し、ここにおるよ」



そう言って何もしてあげられないまま
時が過ぎるのをただ待つだけだった。











陣痛が十分間隔になったのを確認して、


「美優紀、ほな行こか。」



そう言って病院へと向かった。