彩side 









”彩ちゃん、今日家くる?”



一件の通知が入る。美優紀からだった。



”学校終わったら行くな”





美優紀からの連絡は珍しく
何かあったのかと心配になる。










帰り際、


「今から茉由ん家へ
みんな来るけど、彩どうする?」


まーちゅんに声をかけられるが


「今日はええわ。ごめんな」


「彩最近どうしたん?ノリ悪いやん」


「バイト忙しいねん。じゃあ行くわ」



そう言って急いで美優紀の家へと向かう。










部屋にあげてもらい



「美優紀何かあった?」



そう聞くと、
息切れする私を見て


「彩ちゃん、走ってきてくれたん?」


なんて笑うから、


「だって美優紀から連絡くるの
珍しいから何かあったんかなって」



なんだか少し恥ずかしくなった。


そして、


「ありがと」



と、微笑む美優紀。










すると突然、


「あの後、彼から一度も連絡なくて」


美優紀はそう呟く。


「電話した?」


「うん。でもなその番号
もう使われてないねんて。」


笑う美優紀の目には涙が。


「なんでや」


「家にも何度か行ってみてん
でも誰も出てこなくて。
友達の家にでもおるんかな?」



無理して笑う美優紀を見ると苦しくなった。



「なぁ美優紀。
美優紀はどうしたい?お腹の子」


「きっと育てていくのは
大変やけど、産みたい。




下ろすなんてできへんよ…」



美優紀のことだから
きっとそう言うと思っていたから、


「ん、わかった。」


そう言って何も持たず
美優紀の家を出た。








向かったのは、まーちゅんの家。





玄関のドアを開け大きめの声で、


「まーちゅん上がるで?」


そう声をかけ中に入る。




部屋に行くと、


「彩やん!今日はバイトやなかったん?」


そんなまーちゅんの声に被せるよう


「なぁ、美優紀の彼氏おるやん
そいつと仲良い女の連絡先持ってへん?」


顔が広いまーちゅんだからこそ聞いてみた。


「なんや、どうしてん。
一応茉由が持ってるんは
この四人くらいやけど。」


そう言って携帯の連絡先を見せる。


「十分や。家とか分かる?」


「この人とこの人なら知ってる!」


さすがまーちゅんや。


「ちょっと力貸して欲しいねん。
教えてもらってもええ?」


「なんやよう分からんけど、
彩のためになるんやったら
茉由も協力するわ!」


「ありがとう。」



そして教えてもらった家へと急ぐ。







一軒目は留守で誰も出てこなかった。
二軒目の家へと向かう。
見えてきたのは、
最近建てられたアパートだった。







インターホンを鳴らすと、
中から男の人の声がした。


開いたドアの向こうには案の定
美優紀の彼氏がいた。


「あっ…」 


反応を見る限り、
どうやら私のことを知ってるみたい。



「突然すみません、
美優紀の友達の山本って言います。
ちょっと話あるんで
出てきてもらってもいいですか?」


そう伝えると、


「この子誰?」


中にいたこの家の家主であろう女が
美優紀の彼に問いかけた。


「あー、この前話したやつとちゃう?
ちょっと行ってくるわ」


中でダルそうに話していた。









アパートから少し離れた駐車場へと向かう。






そして、


「どう言うつもりですか?」


そう訴えるよう問いかけると、


「どう言うつもりも何も、
もう美優紀とは関係あらへん。」


「そんな無責任なこと
許されると思ってるんですか?
美優紀がどれだけ苦しんだか
あなたには分かりますか?」


「分からへんよそんなん。
俺だって色々考えたけど分からへんねん」



強い口調で私に当たる。



「美優紀、連絡くるの待ってたんですよ」


「俺にはもう、どうすることもできひん」



それを聞き呆れた私は、



「幸せにできないなら、もう二度と
美優紀の前に現れないで下さい。」




そう伝え、その場を立ち去った。



















どうしても、かけてあげられる言葉が
見つからなくて、その日私は
美優紀と会わないまま自分の家へと帰った。