彩side











「美優紀、帰るで」




いつものようにそう声をかけ、
美優紀の教室へと迎えに行く。



「みるきーもう帰ったよ、彼氏と」



なんて嬉しそうに話す朱里とりぃちゃん。



「え?美優紀 彼氏できたん?」


「彩聞いてなかったん? ほら、
あの1つ上のサッカー部の先輩!」


「あぁ…。あの人か。」




それを聞いた私は少し心配になった。




「でも彼、
就職決まったばかりで忙しいみたい。
みるきー構ってもらえへんねんて。」


朱里やりぃちゃんも同じみたいで


「なんか心配やわ」


そう言っていた。




でも私が心配しているのはそこじゃなくて



「あの人、めっちゃ女癖悪いって
聞いてんけど。」



少し不機嫌になる私に、



「え!ないない!それは絶対ないよ」



そう押し切る朱里に
言い返す言葉がなかった。



風の噂で聞いた話だから
私の聞き間違いだったのか
それとも、その彼の心が変わったのか。

根拠がない分 自身もなくて、
あの時はただその現実を
受け止めるだけだった。












そして美優紀とは一緒に帰らなくなった。


















半年以上が経った高校三年の冬。





「彩?最近みるきー学校
休んでるみたいやけど何か聞いてない?」


「いや、聞いてへんけど。」


「連絡も取れなくて。」


「ほな今日帰り、家寄ってみるわ。」







そして学校帰り
美優紀の家へと向かう。






インターホンを鳴らすが誰も出てこない。





帰ろうとした時、


「彩ちゃん?」



久しぶりに聞くその声は美優紀だった。



「あんた学校休んでるみたいやけど
どうしたん?」


「最近、体がだるくて。」


「病院は?」


「行ってない。」


「あかんやん、ちゃんと病院行かな。
なんかあったん?」




少しの沈黙が流れる。





「ここじゃあれやから、中入って。」






美優紀の部屋に入るのは何年ぶりだろう。
家具の配置がすっかり変わっていた。






「なぁ彩ちゃん、
私なんか関わっちゃいけない人と
関わってしまったのかも。」


「どう言うこと?」


「今付き合ってる彼氏。
初めは優しくていい人やなって
思っててんけど、ふとした時に見せる
表情とか口調が怖かったり、
周りからあんまりいい話聞かへんくて。」


「暴力とかはされてへん?」


「うん。」


「悪いけど私はあんまり
その人のことオススメできひんわ。」


「なんで?」



そう問われたが、何も言えず



「はよ病院行きや。
みんなと一緒に卒業できへんようになんで」






そう告げ、美優紀の部屋を後にした。