美優紀side











「りぃちゃん!彩ちゃん迎えに来たら
帰ったって伝えといて!」



そう言って急ぎ足で学校の外へと向かう。
そこには見慣れた車が一台。



「ごめんね、遅くなっちゃった。」


「そんな急がなくてもええよ。
今日はどこ行く?」



そう言って私の隣で笑うのは大好きな彼。




高校二年生の頃からずっと
片思いしてた一つ上の先輩で、
今年の春、やっと想いが伝わり
晴れて私たちは付き合うことになった。





「私はどこでもええよ。」



そう微笑みかけると、
お決まりの言葉が帰ってくる。


「じゃあ、俺ん家行こっか。」


少しでも期待した私が馬鹿だった。











彼は本当に優しくて、かっこよくて
自慢の彼氏であることに変わりはないし、
もちろん大好きなのも事実。





だけど最近は少し変わりつつもあった。



その原因の一つが、
家に誘われる回数が増え、
それを断れない自分がいることだった。








こんなこと彩ちゃんに伝えたら
きっと怒られちゃうから
彼との関係を秘密にしていた。










彼の仕事が忙しくて会えない日が続く。


だけど、


「会うたびにって言うのはちょっと」


恐る恐るそう言うと、
さっきまでの笑顔は消え


「なんで、あかんの?」


「…ごめん。」



断ることはできず
そのまま彼の家へと向かう。







いつもは優しい彼だからこそ
嫌いになれなかった。

















きっと中途半端な私の気持ちが
いけなかったんやろうな。