機械業界では、20年前にCADは、2DCADから3DCADへ切り替えの波がやってきました。
(おそらく建築業界は、3DCADの切り替えが遅れているイメージがあります。)
3DCADが普及するとCAEが浸透し、それが当たり前のようになると、今度は1DCAEやXiLsといった1Dシミュレーションが普及してきました。
今回は、20年ぐらいの間に起ったこれらの進化の過程で、色々と感じたこと、CADを操作するCADオペレーターについての将来性について書きたいと思います。
2DCADから3DCADへ
3DCADが普及する前は2DCADやその前は、ドラフターなどを使って図面を作っていました。
3Dの物体を図面の中で2Dで表現するので、2Dから3Dをイメージするのが大変でした。
むしろそういった2Dを頭の中で3Dとしてイメージするスキルが専門スキルとして重視されていました。
今もなお、町工場などでは3Dモデルでなく2D図面を必要とするところもあり、それがゆえに3DCAD化が遅れているところもあります。
おそらく建築業界は、2D図面で仕事をする人が多く、3Dにしなくても実務に困らなかったので、3DCAD化が遅れたのではと思っています。
しかし、機械業界では、この3DCADにより爆発的な効率化が起こり、かなりの恩恵を受けています。
例えば、以下が代表的なものでしょう。
- 3DデータからCAMによるNCデータ作成
- 3Dデータを使ったCAE(強度解析、固有値解析、熱解析、流体解析など)
- 3Dデータを使ったデザインレビューや隙干渉チェック
CAEの普及
前述したように3DCADにより3Dデータが作られると、それを活用するためにCAEが普及しました。
どの会社も現物の試作品を作ると開発コストがかなりかかるため、できるだけバーチャルで検討をしたいということで、CAEの普及は加速しました。
CAEがバラ色の世界かというとそうではなく、CAEの解析結果で合格だったのが、最終的な実物を使った評価でモノが壊れた!なんていうことは今もなお、起きている問題です。
しかし、今までは全ての実物で評価していたものが、バーチャルで3Dデータとして前倒しで評価できるということは非常に喜ばれ、開発のリードタイムを短縮できるということで、CAEはどんどん普及していきました。
1Dシミュレーション(MBD)の普及
CAEは今もなお、普及中ではあるものの、3DデータができてからでないとCAEできないという問題がありました。
開発の中には3Dデータがなくてもできるシミュレーションがあるのでは?ということで、1DCAEや1Dシミュレーションと呼ばれたりしますが、MBD(Model Based Development)という考え方が生まれていきました。
機械などは各部品が非常に複雑に絡み合い、求められる性能を満たさないといけないため、そういった製品としての仕様的なものを1Dシミュレーションを使って、解析しようというものです。
これをやるツールをSiLs、MiLs、HiLsといい、まとめてXiLsと言ったりもします。
今後のCADオペレーター将来について
このように機械業界では、市場の求める製品をスピーディーに投入するために、開発の効率化が進み、上記のようなツールの変遷があったと思っています。
ツールが進化する過程で、それらを使う技術者、エンジニアも変化していると思います。
例えば、2DCAD時代は、それらを使うトレーサや設計者が多かったですし、3DCADが普及すると、今まで2DCADを使っていた人が3DCADを使いだしました。
その流れと共に3DCADを扱うより、材料力学や機械力学などのスキルが求められるCAEのエンジニアが増えていきました。
気が付くと3DCADオペレーターよりCAEをやる技術者が増え、業界での地位も台頭してきました。
そして1Dシミュレーションが普及している今、それらのツールを扱うMBDエンジニアが増えており、地位も台頭しているイメージがあります。
数としては、CADやCAEのエンジニアには及ばないとしても。
私のイメージだと、エンジニアの数では、CAD>CAE>MBDだが、地位としてはCAD<CAE<MBDだと感じている。
これは技術の進化と共に当たり前と言えばその通りだと思う。
ドラフターを使って図面を描いていたトレーサーと呼ばれる職業がほとんど無くなったように、上記の進化により消えていく職業もあるのではないか?
そう考えたとき、真っ先に窮地に追いやられるのがCADオペレーターであってもおかしくはない。
CADの世界も、2DCADから3DCADへ、機械業界では3DCADから3D図面へ、建築・土木業界ではBIM/CIMへ移行してきている。
もし現在CADオペレーターの方の中には、ちょうど自分のキャリアを見直したいと思っていた人もいるかもしれない。
幸いにも今はネットには求人の案件もたくさんあるので、自分の市場価値を知る上でも、一歩前に踏み出すことで気持ちが楽になったりもするだろう。