マーマレードとレトルトグリーンカレーの炊き込みご飯 序章 | サボテンマニア

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こんばんは。
サボテンです。

記事のタイトルをご覧になって、ご存知の方もおられるかもしれません。
『笑っていいとも!』火曜日の『夢炊き屋』というコーナー内で、タレントの杏さんが持ち込んだモノなのですが・・・

僕自身、たまたまこの放映を見たのですけど、その時はなんとも思えなかった。
いつものように、死んだ魚のような目でテレビを眺める一視聴者にすぎなかった。

そう、あの時までは・・・


『笑っていいとも!』には、『増刊号』と称して、日曜日に前週の総集編のような番組を放映する。

まぁ、日曜日の10時なんて・・・
『いいとも増刊号』なんぞ特に見たいわけでもないけれど、他のチャンネルはさらに見る気が無い。
熱心に見ているわけでもないが、チャンネルを合わせてるだけ。
そう、ただそれだけだったんだと思う。


------ 僕はこの時、全く気づいていなかったんだ。
         あの人が、例のコーナーを。あの炊き込みご飯を。
            好奇心に満ち満ちた目で、見つめていたことを。

                 僕は全く気づいていなかったんだ ------


人生は時に、些細なことで事態が急変することがある。
そう、小さな出っ張りにつまづいて、顔面からコケてしまうように。
車のブレーキとアクセルを間違えて、コンビニに突っ込んでしまったり。
生活ルーティンの中に隠れた、ちょっとした罠に、人は呑み込まれてしまうことがあるものだ。

件の『増刊号』が放映された週末、いつも隣にいる人が、突然こう切り出した。

「ねぇ、この前の『いいとも』のさ・・・」

「ん?『いいとも』のなんだって?」

「グリーンカレーの炊き込みご飯ってあったじゃない?」

「あぁ、マーマレードぶち込んでたヤツね?うんうん。」

「アレやってみない?w」

「ぇw」


瞬時に「マズイ!」と思った。
コレは殺られるッ!呑み込まれるゥゥッツ!
罠だ。罠だ。罠だッッ!!!

自ら“マーマレード”という単語を出さなかったところにも、別な思惑と悪意(笑)が感じられたような気がした。

モルモット並みではあるが、頭脳をフル回転させる。
拙いながらも、それまで培った経験と知識が。
震える、湧き上がる感情が。
導き出した答えが!

「わかった。こうしようじゃないか。」

一瞬自分の中で反芻し、それを悟られないよう、落ち着いて喋り出す。
「来週も同じ気持ちだったら、その時は共に製作し、食しよう。」

「・・・どうだろう?」
完璧だ。
強く否定しているわけでも、かといって、100%肯定しているわけでもない。
一度相手の言葉を受け入れ飲み込んだ上で、諸手を挙げて賛成しているわけじゃないよ?という意思表示も兼ねている。
パーフェクトだ。実に素晴らしい。
こんな自分に100モルモットを与えてもいいと思えた。

「うん・・・わかった・・・」
落胆の色を隠そうとはしていなかった。
反論の材料を探したが、あまりこちらを刺激して、強硬に否定されるのを恐れたのかもしれない。
それ以上追随する言葉は出てこなかった。


ごめんよ。
でも、回避できる危険は避けたくなるのが人の性。許しておくれ。
きっと来週には忘れていることだろう。
人の記憶・想いは、時間が経てば薄らいでゆくものだ。
一時の病。そう、熱病みたいなものさ。
熱が冷めれば・・・忘れるだろう。


昔、学校の先生に言われたことを思い出す。
「最後まで諦めるな!!」
確か体力測定の時、50m走の最後で気を抜いた走りをしたからだったと思う。
二人一組で競って走ることで、お互いのタイムが伸びる。
・・・のだが、それは実力が同程度の場合の話だ。

はっきり言って、僕は足が遅い部類だった。
なのに何故か、そこそこ速い人と組まされてしまった。
相手の人も迷惑な話だろう。もちろん僕だって迷惑な話だ。
掛け声と同時に、ストップウォッチが押される。
僕は僕なりに一生懸命走ったのだが、一緒に走ってるヤツにグイグイと突き放される。

人間、「もう勝負が見えた」もしくは「負けた」と確信した時、「力が抜ける」という現象が起きる。
無駄なことに余計な力を使いたくない。精神的疲労と集中力切れなども要因だと考えられる。
しかし、一番の要因は、“勝負がついている。特に負けているのに、本気を出しているのが格好悪いから”の場合が多い。
これは小学生など、精神的に幼く、なおかつ自我が目覚め始めたばかりの頃に見られる。
苦しい事より楽しい事。格好悪い事よりも、格好良い事の方へ。
快楽を求める本能的行動と、集団の中における自分への意識。
これらが強く出易い年頃ということだろうか。

「全力で走ってない」という理由で、もう一回走らされた。
もう一回走らされる。しかも、一緒に走るヤツに全く追いつけないのに。それをもう一回やらされる。
屈辱的なことこの上ないのだが、自業自得でもある。
いっそのこと、ピエロにでもなるか?とも一瞬考えたけど、面倒臭いので真面目に走ることにしたんだ。

タイムは0.何秒か上がったけど、そんなことはどうでも良かった。
「諦めるな」と先生は言ったけど、世の中どうしようもないことはある。
足が遅いヤツは、速く走ろうと思っても限界がある。
いや、足が速く、それを追求している者こそ、それを実感していると思う。

先生、あなたは「諦めるな」と言ったけど、そんなことアンタに言われる筋合いは無いよ。
あなたは「諦めないこと」を教えてくれようとしたけど、僕はそれを学べなかった。
むしろ、「諦めないこと」を「諦める」ことで、諦めることを学んだんだよ。


次の週末、キッチンに立つその人の手に、レトルトグリーンカレーが掲げられた。
聞けば、この話を切り出した時点で既に購入済みだったとか。

「もう諦めろよ。」
カブトムシ並みの脳内で、誰かがそう囁いたのを聴いた気がする。