妻が出て行ったのは、11月のある日です。
子供は1歳半。言葉が少し出始めた頃でした。
前日の夜から少し妻と言い合いをしてしまったので、
朝も引きずってお互い言葉を交わさず職場に出かけました。
ちょっと言い過ぎたな、仲直りしようと思い、
妻の好きなお土産を買って、いつも通りの時間に帰宅しました。
すべての部屋が真っ暗で、誰の返事もなく、
玄関に妻と子供の靴がないことは確認できました。
私にとっては初めての出来事でしたが、
最初の数十秒間は、
「怒って実家に帰ったのかな。ちょっと言い過ぎたかな」
「子供は大丈夫かな。もう寝てる時間だよね」
「お土産が冷める前には(その日のうちに)帰ってくるかな」
そんな呑気なことを、ふと考えたと記憶しています。
でもその後、リビングを開け、
やっと状況が呑み込めました。
明らかに私のもの以外、何も残されていませんでした。
キッチンを探しました。
妻と子供のものは、何も残されていませんでした。
ベッドルームを探しました。
妻と子供のものは、何も残されていませんでした。
冷蔵庫に貼った写真も、もちろん写真立ての家族写真も。
ベビーカーも、妻の服も、子供の服も、どんな小さなおもちゃも。
私の両親を含めて子供にプレゼントしてもらったものもすべて。
2日後、「あなたが怖い。もう無理です。」とだけ書いた、
メールが届きました。