まやかしの正義では | 坂道ぶろぐ 2011

まやかしの正義では

プロレスラーの冬木弘道さん
亡くなられて20年以上経ちますが、
まぁ、大ファンでしたし、今も変わらず
彼の言葉や考え方に影響を受けています。
その冬木さんの実質的な遺著に相当する
「鎮魂歌」に書かれていたことですが。



冬木さんが当時所属していたFMWは、
もとは大仁田厚さんが作った団体ですが、
その当時の社長・荒井昌一さんが言うに
「ウチはいじめの無い団体です」と。
荒井社長はいじめの類いが大嫌いで、
FMWの道場(練習場)内ではいじめは
絶対に許さないと。
そう内外に公言していたそうです。

ハヤブーのような部外者から見れば、
それは良い事だと思ってしまいますが、
それについて、冬木さんが鎮魂歌の中で
書いておられたのは、
確かにいじめは良くないことだけども、
人は理不尽な力に翻弄された後には必ず
成長するもので、そうした経験値を積む
ことによって、仮にリング上で想定外の
事態が発生したとしても、それらに対応
可能な柔軟性が養われることになるし、
陰湿ないじめは良くないが、
プロレスという特殊な世界においては、
その全てを否定するというのは、
プロレスを理解していない人の発想だと、
実質的に荒井社長を批判されていて、
それにすごく驚いた記憶があります。

その時にも思ったことですが、
冬木さんもプロレスを伝統芸能に通じる
ものがあると評しておりましたが、
プロレスとか伝統芸能とか、ある意味で
特殊な世界というのは、
学校や一般企業と同じ価値観で測ったら
アカンのだろうなぁ
、ということです。
いじめを肯定するというのではなくても
一般的な価値観をプロレスに当てハメて
考えるのは正しくないのだろうと。
だって、暴力は絶対ダメとか言いつつ、
プロレスは殴る蹴るが仕事なんですから。

多分同じことが、芸の世界、芸能界にも
言えると思っておりまして、
冬木さんもご自分でおっしゃってました
けど、サラリーマンのように9時5時で
毎日決まった場所で仕事をするとか、
オレには出来ないと。
だからプロレスラーをやってるんだと。
今の時代のプロレスラーは知りませんが、
過去はそういうレスラーが多かった。
あの蝶野正洋さんだって、闘魂三銃士の
橋本真也と武藤敬司がブッ飛び過ぎてる
から普通に見えるだけで、知る人ぞ知る
遅刻魔ですからね。
その世界の人達にサラリーマンの価値観、
コンプライアンスを押し付けること自体
無理がある。
狂言師の和泉元彌さんが、稽古の場では
お弟子さんは師匠から言われたことだけ
忠実に実行することを求められ、
逆に、師匠に何か質問したりすることは
絶対許されないと、そんなお話をされて
いましたが、我々一般人の価値観だけで
芸の世界のしきたり等を判断するのって、
やはりちょっと違うのかな
、と。

以前も書きましたが、コンプライアンス
なんてのはあくまで「方便」であって、
絶対的な正義になり得ないものです。
サラリーマンの世界ではそれが正義でも
プロレスや伝統芸能の世界で同じように
それが正義になるのかって、ハヤブーは
違うと思うんですよね。
まさかいじめや不貞行為を正当化するの
ではありませんが、仮に少しでもそれに
該当すれば、全然関係のない第三者が、
「これはアウトだろう」とか言い出し、
該当者の人格まで全否定、仕事も地位も
全て剥奪するかのような、「私刑」とも
思える昨今の風潮はオカシイと思う。




「まやかしの夢を語るな!」

石田三成役の中村七之助さん風に言えば
まやかしの正義を語るな!

この場面では、感情の高ぶりに合わせて
中村七之助さんのお顔の筋肉がピクピク
痙攣していて、どうする家康放送当時も
「すごい演技(力)だ!」と、
非常に話題になっていたシーンです。