うちの彼氏は脳腫瘍34 | 【男×男】理想はStressFree【2005年~】

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アラフィフゲイの日常。

2005年からの付き合いになる彼氏のことや彼氏の脳腫瘍のこと、仕事のこと、飼っている猫のことなどを、徒然なるままに書き連ねています。

現在彼氏とは戸建てにて同居中。東京から地方へ転居してきたので、周りは高齢者と田んぼばかりです。

阿川さんは私とアラ母の方を向くと、

 

阿川さん

「それって第三者の立場だったり、話し相手だったりして、『あ、今飛んでるな。』っていうのは分かります?

なんかこう、『聞いてる?』みたいな。」

 

と訊いてきた。

 

「えーっと……。私、仕事で補聴器の販売をしていたんですけど。」

 

阿川さん

「あ、ええ!? はいはい!」

 

ちょっと驚く阿川さん。

 

「補聴器の『会話相手以外の人の声をボリュームダウンさせる』という機能がないと、目の前の相手との会話に集中できない高齢者がいる……じゃないですか。」

 

色んな職歴のある私だが、補聴器の販売にも携わってきた。
そして、言語聴覚士は聴覚障害者の補聴器の調整を、公的に認められた職業でもあるので、阿川さんも補聴器のことはある程度知っている……のかわからなかったので、半疑問形になってしまった。
※言語聴覚士が受け持つリハビリは多岐に渡り、「話すこと」「聞くこと」「食べ物を飲み込むこと(嚥下機能)」があり、補聴器関連は「聞くこと」の中の1つにすぎないのだ。
※聴覚障害の原因は多岐に渡るので、補聴器で解消できるのはそのごく一部になる……とも言える。

 

で、高機能な補聴器では上記したように
「目の前の相手との会話に集中するために、敢えて正面以外の位置にいる人の声を抑制する。」
という機能が付いたものがあるのだ。
これは、脳機能が衰えてしまい、目の前の相手以外のヒトの声がすると、「その声を無視する。」ということが出来なくなった高齢者のための機能だ。
静かなところでの会話では必要のない機能だが、複数人が集まってめいめいで会話をする場所(居酒屋とかたくさんの親戚が集まっている時とか)では、あると会話が楽になる機能。
※補聴器の金額が高くなりがちなのは、高齢になるほどこういった機能が衰え、その機能を機械が代わりにやらないといけないからなのだ。
※つまり、若いうちに難聴になってしまった人だと、脳機能がしっかりしているので高額な補聴器でなくても良いことはよくある。

 

「私から見て、その高齢者と同じ状況になっているのかな、って思います。

私と会話をしていて、横で他の人たちが話していて、更にTVからもヒトの声がして……ってなると、かなり私との会話に集中できていないように見えます。

特にヒトの声が聞こえると紛らわされるのかな、って思います。

ヒトの声が聞こえてきてしまうと、脳で上手く処理できなくて私との会話に集中できないのかな、って思っています。」

 


↑アラヤちゃんが表現したそういう時のアラヤちゃんの脳内。
音声の洪水で、話し相手の言葉が意味をなさないそうだ。

 

阿川さん

「あ、そういう感じがする。なるほどなるほど。

……ちなみに、面と向かって話している時に、『ねえ聞いてる?』っていう雰囲気になることはありますか?」

 

「あ、『ねえ聞いてる?』っていう雰囲気になることはないです。

ただ、本人が何か考えている時に話しかけると、考えていたことが吹っ飛んでしまうとは言っていました。」

 

アラヤちゃん

「あはは(^^;」

 

阿川さん

「あはは!!!(察しw)」

 

アラヤちゃんはそのことを秘密にしておきたかったのか、苦虫を噛み潰したかのような顔をして苦笑していた。
そして、それを見て爆笑して流そうとする阿川さんw

 

アラヤちゃん

「……へへっ(^^;」

 

「私が話しかけたら、『あ、今考えていたことが飛んじゃった。』って言われるというか……。」

 

阿川さん

「あー。なるほどなるほど。
それが容易になっちゃうと言うか。

でも、それってけっこうあるじゃないですか、普通でも。話しかけられた時に。

『あー、いま大事なこと考えていたのに!』ってことって。

それがぽーんと飛んじゃうというか、その調整が効かなくなるというか……。」

 

「で、その『飛んでしまったこと。』を後で思い出す、ということが出来なくなるみたいです。」

 

阿川さん

「あ、そうか。『あの時は……。』っていうのも難しくなるということですねー。」

 

そうかー、という感じで阿川さんはメモを取った。
そして、今の会話を重視しているのは傍目に見ていても良く分かったが、なぜ重視していたのかを説明してくれたのだった。

 

阿川さん

「なんでこういうことを確認するかと言うとー、覚醒下手術をするって最終的に決定した場合……決定した場合にですね、手術中にお話をしないといけないわけなんですよー。」

 

ん? 覚醒下手術って、もしかして受けられない可能性あり??
それも含めて言語聴覚士さんと作業療法士さんの検査をいま受けてるの???

 

やべぇ。
この検査重要ぢゃん( ゚Д゚)ヒィィ

 

阿川さん

「で、覚醒下手術中に質問に答えられなかった原因が、「集中が飛んでいたから」なのか、「掛かっていた麻酔の影響」によるものなのか、それを判断しないといけないんですよー。

麻酔の影響って本当にバカにならなくって、「あ、いま瞬間的に寝てました!」って方も本当にいるんですよ!!w

それと、覚醒下手術の目的である刺激に対して反応が上手くコントロールされちゃった、って場合なのかというのも考えなくちゃいけなくてー。

「寝ちゃってた」とか「集中が飛んでいた」とかが原因だと、手術の目的を果たさないので、そんなのもこの検査のやり取りの中で判断できるように整理出来ていけたらいいな、って思います(^^)」

 

覚醒下手術では、

↑でも説明されている通り、脳の一部を電気刺激で麻痺(機能不全状態)させて、そこの部分の腫瘍(と一緒に正常な脳細胞)を摘出していいかを判断する。
だけど、脳の一部を麻痺させたせいで質問に答えられないのか、集中が飛んだせいで答えられないのか、あるいは一瞬寝てしまったせいで答えられないのか、では大きな違いがある。
寝てたせいで答えられず、そこの部分の腫瘍は温存することにしよう、となると摘出できたはずの腫瘍が摘出できない、ということになってしまうのだ(><)

 

阿川さん

「さてそうしましたら、失語症に関する検査はこれで終わりになります。

言葉のやりとりや、図形の問題、それから計算なんかも少しやってもらいましたが、今日からは、いわゆる知能検査というものをやっていきたいと思います。

でもまあ、これは今日だけでは終わらなくて、残りの検査はここに全部掛かってくかな、とは思うんですけどねー。」

 

阿川さんはそう言うと、
更にボリューミーな検査を続けるよー
という宣言をしたのだった。

 

↓に続きます♪