思いがけず、というのは、
その日、わたしの髪にハサミが入る30分前まで、
まさか今日、人前でウィッグを取り、
髪を切ってもらうなんて、思いもしなかったからだ。
先日、友人と話していたときのこと。
ウィッグ暑い、
脱ヅラしたい、
てんでばらばらに生えてきて、
どうしようもない、
せめてちょっとは整えたいけど、
でも、こんな状態でどこで切ってもらえばいいのさ、
この肝心の最初の一歩が踏み出したくても、
踏み出せないんだよーっ、
キーッと、
ブーブーブーブー、ブーたれていたところ、
友人が、事もなげに言った。
「いい人がいるよ、連れてったげる!」
この近くに知っている人がお店を開いていて、
年中ヒマで、一人でやっているという。
無口でぶっきらぼうだけど、
腕はいいらしいのよ、と、
早口でわたしに説明しながら、
携帯をささっと取り出し、
「あー、もしもし??」と、話しだす友人。
えええ?嘘でしょ?!
と思いながらも、
脱ヅラは先でも、とりあえず1回カットしたいと、
ここのところ、どうしようどうしようと考えていたから、
急展開に驚きながらも、
こんなチャンス滅多にないかも、
やってもらおう!と気持ちが固まる。
大丈夫だって、いまお客さんいないって。
貸切にしてほしいって言っておいた、と、
慌ただしく向かいながら、
友人の口から、目がすっ飛び出るような一言が。
そして、お店に到着。
床屋さんだよ( ̄Д ̄;;
女の人も来るって言ってたよと、いうものの、
床屋さんには間違いなく、
青と白と赤のが、ぐるぐる立派に回っていた。
でも、もういいんです、切っていただければ、
整えていただければっ。
お店はまだ新しく、
明るい雰囲気で、ちょっとホッとする。
理容師さんも、30代半ばくらい。
私服でブーツとか履いちゃってるような。
こんにちは、突然すみません、と言ったあと、
どうしたもんだかと突っ立っていたら、
「彼女、ウィッグなの、ちょっと自分の髪を揃えてほしくて」
と、友人が言ってくれた。
ええと、治療で脱毛しまして、
いま生えてきてるんですけど、
ボーボーなので、ちょっと整えたいって思いまして。
しどろもどろで説明していたら、
ドバーッとホトフラがきて、
もう、顔は真っ赤だし、汗はびしょびしょだし(TωT)
穴があったら、埋まりたいくらい。
話を聞き終わると、無表情で頷き、
奥から、衝立を持ってきて、
わたしの座った椅子の横を囲ってくれた。
そして、ウィッグを取った。
さらに汗が滝のように流れた。
ここのところは伸びるんですけど、
ここらへんは伸びないんです、
でもなんとか整えて、
できるだけ早い時期に、ウィッグを卒業したいんです。
しゃべっていないと、恥ずかしくてどうにかなりそうだったので、
なんだかひとりでべらべらしゃべってしまった。
「じゃあ、ここは切らないほうがいいスね」
「ここは熱がこもるところだから、ちょっと切りますよ」
「ここ、正面から見て、地毛がのぞいちゃったりしないスか?」
ぼそぼそとだけど、その都度確認、という感じで、
気を使って切ってもらったようでした。
わたしのことを、怪我か何かして坊主になったと思っているらしかったので、
「いいえ、治療の副作用で、抜け落ちたんです」
と言ったところ、
しばらく黙ったのち、
以前、抗がん剤治療をするから、
髪が抜ける前に坊主にしてください、
という女性のお客さんを何人か切ったことがあります、と、理容師さん。
「ああ、わたしも同じです、それでです」
やっと発毛してきて、すごく嬉しくて、
でもボーボーで悲しかったので、
まだまだウィッグなんだけど、でも、
1回きちんとカットしたいって、ずっと思ってたんです、と話した。
じゃあ早く伸びるといいスよね、と、
シャンプーの選び方や、シャンプーの仕方を丁寧に教えてくれ、
半年ちょっとでここまで伸びているのなら、
けっこう早いほうスよ、と慰めてくれた。
流れる汗を見てか、
途中でエアコンを強くしてくれたり、
ウィッグをかぶりやすいように気をつかってくれたり、
ぶっきらぼうな理容師さんでしたが、
ところどころで、優しさを感じて、
エーンと泣きそうでした。
床屋さんなだけに、耳たぶの産毛まで剃ってくれたときは、
恥ずかしくて倒れそうだったけれど(///∇//)
帰宅して、改めて鏡の前に立って、
少ーし見栄えがよくなって、
工作ハサミで段々にしちゃったとことかも、
すっきりキレイになっていて、感激。
ようやく、人間らしい頭になったというか(笑)
でもねー。
やっぱり床屋さんだからだよね。
襟足が、超男前なんですけど(;^ω^A
キレイにピシーーーッと揃ってるっていうか。
写真を載せる勇気もないほどに。
でも、約10ヶ月ぶりのカット、嬉しかったな。
次は、美容院デビューしたいぞ。
ランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。

にほんブログ村