No.304 2007年(平成19年)7月26日【VOL32-7 第4版】 | Paradigm21 Web Editorial

No.304 2007年(平成19年)7月26日【VOL32-7 第4版】

中部21世紀フォーラム月報 INDEX FAX                                       
 ◆◆◆◆◆        
  発行/C21F会報編集委員会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  ¶今月の話題 ◆三年後の"名古屋開府"四百年を標榜して進められている、名古屋城本丸御殿の復元事業の目玉は、障壁画のレブリカをつくって見世物にしようという困った代物である。空襲で焼失した国宝から難を免れたホンモノがあるから出来る、箱もの行政と心配している人も少なくない。とまれ戦後、建て直した名古屋城じたいが、とても間近では鑑賞に耐えないコンクリートの化け物だということを忘れてもらっては困る。◆街を挙げて狩野派の複製品の是非に無頓着なのも、文化を語る以前の問題ではないか。明治の東京遷都以来、天皇家の住みかになって進んできた江戸城蹂躙プロジェクトは、薩長の意趣返しだったが、いまさら復元しようなどと言い出す人はいない。たしかに、尾張名古屋を城で持っていたらしい。徳川家康が天下人なった後に建てられた旧天守閣だけでも、総床面積が姫路城や江戸城を超える広さだった。◆金鯱をいただいたのも幕府初期の示威行動の一つで、関が原の戦いから15年後に完成した後も、三代将軍家光のために豪華な上洛殿を増築したりしている。しかし、国宝に指定されたのは1930年のことに過ぎず、軍靴の響き高鳴る時代に練兵馬場などに侵食されてきた地元師団本部を、天皇から譲り受けた旧離宮を盾にした反骨の抵抗の影も見て取れる。 ◆ともかくも、松原武久市長の力説する「本丸御殿はすばらしい文化財。市は今、壮大な復元プロジェクトに挑戦している」というロジックは、甚だしい矛盾に満ちている。本丸をコンクリートの偽物で誤魔化しておいて、過去の文化財の模写複製に血道を上げるのはどうかしている。焼け残った障壁画などを空々しい復元御殿にはめ込むのは技術的にも無理なのは承知している。それでもホンモノを展示こその文化である。◆2010年の着工を目指す、総額150億円プロジェクトの哲学も改めて問いたい。国の特別史跡に指定されているため、文化庁にの現状変更の手続きを出したものの、完成当時の忠実な復元には御殿跡の礎石を保存など今年度中答申のハードルは予想外に高い。現存する国宝の二条城二の丸御殿と並ぶ世界的文化財が、やすやすと甦っては戦国時代村も色をなくす。名古屋城天守閣"再建"費用の三分の一が、市民からの寄付金だったのを擬えた算盤勘定も呑気で嗤える。◆構想では本丸御殿の完成後も、防御用の施設だった東北隅櫓や本丸を囲む壁である「多聞」復元を目指すことを公表。二の丸内にある愛知県体育館を城外移転を視野に入れて、広大な跡地に馬場のあった向屋敷まで復元する目論み。またぞろトコロテンの箱もの行政は蔓延る。もともとは本物の金鯱を名古屋城に上げようという好事家の発想が下敷きにあるようだが、コンクリートのレプリカに純金のシャチホコでは余りにも無残なのは誰でも気づく。 ◆いつのまにか市民グループである本丸御殿フォーラムが出来て、会員新春顔見世パーティーなどが新聞でも紹介されていた。世話人は岡谷篤一さんである。たしかに五摂家崩壊のナゴヤに官民あげたアドバルーンはほしい。ここにきて名商と中経連が会員企業から40億円の寄付を募ると表明し、仮に満額が集まればこれまでに市民などから寄せられた17億円と合わせて目標額の五十億円を大きく上回ることになる。◆「2010年度までの四年間で寄付目標額を達成したい」とのたまう松原市長は、来年度に着工、とりあえず開府記念にあわせて玄関の一部を公開する、と慌ただしい。愛知万博の環境思想を受け継ぐ前提で万博剰余金10億円が、上乗せされる見通しもが立つと市議会では、「天然の木を使うことを通じ、木を生み出す山に思いをはせ、自然や環境について考えてもらうきっかけになる」と答弁しているのもいかがなものか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

¶ニュースの死角  O I !  ◆「与党の大敗予想に日銀ニヤリ」なる見出しを夕刊紙で見かけた。いわく月末にせまった参議院選挙は、年金問題の泥沼化、事務所経費問題などから事前の選挙予想は軒並み与党苦戦のアンケートが出ていた。それを横目に、日銀が笑いを噛み殺しているというのである。日銀は来年三月、福井俊彦総裁の五年の任期が切れる。事情通の下馬評では、後任総裁には財務省出身の武藤敏郎副総裁、副総裁には将来の総裁含みで生え抜きの稲葉延雄理事の昇格が有力視されている。 ◆ただ、日ごろから日銀に強硬姿勢で臨んでいた自民党幹部は「一連の幹部人事案に早くから、いい顔をして来なかった」。水面下の駆け引きはバブル処理の負の遺産に振り回され続けている。円安と裏腹の輸出急増は限界にきているのに、円キャリーなどという歪な取引の急増は、国債利払いを抑えたいだけの財政当局を虚ろに超低金利継続に突き動かしている。◆一部の守旧派大物議員連が日銀の金融政策変更時に強硬な反対論を展開し、日銀の独立性を保障した日銀法の改正まで再三ちらつかせたと言えば、裏事情は呑み込めるはずである。ことさら日銀が警戒したのは「総裁候補として竹中平蔵氏を水面下で推していた」という嗤えない駆け引きに神経をすり減らしていたからである。◆竹中某といえば、閣僚時代にデフレの認識や金融政策運営の手法を巡り、しばしば日銀との意見対立をマスコミにレクチャーし続けたいわくつきの御仁だし、この人には欧米外資の手先との観測がついて回る。「日銀にとっては目の上のたんこぶ的存在」なのである。幸か不幸か、与党惨敗予想が強まるにつれ、与党大物議員の発言力が低下してきたのは単純な引き算にすぎない。◆日銀の組織防衛に追い風が吹いたかどうかはともかく、昨今の金融市場の正義と建前は完全に破綻している。世界のGNPの伸びが前年対比の貿易総額7%増の半分にすぎないのに対し、株価だけは 14%増とバイアスがかかりすぎ膨れ上がった風船のような事態にある。誰も言わず教えないのに、いつまにか年金をめぐるドタバタに紛れてそれが破綻し始めている事実を突き付けられている。敗戦で紙切れになった戦時国債を思い浮べればよい。そして与野党を問わず、国民総背番号制にだけは確実にドライブを切っている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
SUMMING UP
 ●名古屋港の開港百周年イベントをめぐって奇っ怪な鞘当てが起こっている。大々的な記念事業をうたっている夏休み企画の「アジア発・世界最新/恐竜大陸」は、中日新聞とCBCが主催なだけで共催の記念事業実行委員会というのもタテマエだけらしい。会場のポートメッセなごやを抱える名古屋市は観光コンベンションビューローまで駆り出していながら、ミナトの本丸である名古屋港管理組合のHPからは全く情報が得られない袋小路でしかない。そもそもは本丸御殿復元プロジェクトにからめて、いまさら恐竜のガイコツでもなかろうと調べて行くと、箱もの利権を含めて同床異夢の両者の権益優先ばかりが目立ってくる。困った話である。 ●名証IRエキスポは、今年初めて一般参加者とマスコミやアナリスト連を二日間とも共通に受け入れた。会場に入ったとたん、異変は察せられたものの、いかにも勝手が違いすぎるとの声が少なくなかった。およそ、やる気のなさそうなハケン社員の誘導への反感は、相変わらずエアコンの聞いていない会場の蒸し暑さを助長するばかりだった。この企画が産声を上げた時から尽力してきた、森島康雄・元常務の顔が退任で見えなくなったのも、一つの転機を象徴している気がしてならない。 ●経営統合も視野入れて、三越と伊勢丹が資本提携交渉へ動きだしたニュースには多少の感慨がある。大丸に呑み込まれてアイデンティティーを放棄しようとしている松坂屋との組み合わせとは位相が全く違う。ここは旧東海銀と同じように社史の片隅に名前が残るだけの結果さえ取り沙汰される。社長同士が開成の同窓という縁と取り持ったという観測もあるものの、三井の創業企業と三菱系の台頭企業の組み合わせは、日本的な財閥資本系列がここまで壊れてきた証左か。● 百貨店業界4位の三越が同5位の伊勢丹と資本提携に向けた思惑の気になる。競争激化で業績が低迷する三越は、収益力に優れる伊勢丹と手を組むことで経営をてこ入れする。百貨店の既存店売上高が2006年まで10年連続で前年実績を割り込み市場が萎縮する中で、売上高の単純合計額は1兆5800億円となりスケールメリットをマスコミは喧伝するばかりだが、このまま行けば大丸と松坂屋の新持ち株会社であるJ.フロントリテイリングを抜く業界首位の百貨店が誕生する。●去年六月には西武百貨店とそごうが大手流通グループ「セブン&アイ」の傘下に入ったほか、ことし九月には大丸に松坂屋ホールディングスが身を委ねる。地元で伊勢丹と提携して再浮上をうかがっている名鉄百貨店あたりにも寝耳に水だろうし、丸栄はますます縮小均衡にしか展望はない。大再編時代に入っているという在り来りの解説の影で、株式資本主義の終焉だけが見え隠れする。 ●第三銀行の谷川憲三頭取(64)が、東海四県の六行でつくる第二地銀東海地区協会の会長として「第二地銀の存在意義がかつてないほど問われている。各行がどう将来像を描いていくか。生き残りをかけた戦い」と新聞にコメントを寄せている。九州の県境を越えた地銀再編が蠢き、北陸と北海道の銀行が共同持ち株会社を持つ時代である。第三銀行も旧熊野無尽で昭和42年に松阪に本拠を移した顛末で知られる。三重県名張の大道無尽が発祥の中京や、不良再建処理で旧東海銀が日銀から押しつけられた岐阜の旧相銀二行はUFJが三菱に組み込まれて、ますます不思議な鬼っ子になってしまった。大蔵天下りの指定席になっているにしては、20年以上トップを務めた故三浦道義さん以来、不思議な論客の出るムードがある。その伝統をしてか、「東海でも再編はあり得る」との御託宣。 ●ミサワホーム東海社長に斎藤政行・専務執行役員が昇格という記事を見て、ここでも旧東海銀行の権益は雲散霧消したと納得させられた。津工業高卒のいわば叩き上げで、統合前の三重ミサワホーム入社して、東海三県販社統合で四年前に取締役になったばかりの57歳。産業再生機構の手品でトヨタに軍門に降ってもかつてのオーナー三澤千代治は、訴訟を起こすなど気の毒なばかりである。しかし、宮川公策前社長はミサワホーム近畿社長にシフトさせたり、ミサワホーム東京の竹中宣雄前社長はわずか三年で本体の専務執行役員に戻っている。 ●旭テック社長に石井英夫という人が登場した。旧旭可鍛鉄である。長年、日本ガイシの系列だったこの会社をグーグルアラートからはずしてなかっただけだが、東大工から日産に入った後、ゴーン旋風の洗礼を受けずに転出し、ハネウェル・ジャパンの社長から二年前に顧問で入ってきた。63歳という年齢からすれば、無難な人事なのだろう。●むしろ入交昭一郎取締役共同会長兼社長の社長兼務を解く、という発表の方が目を引いた。本田からセガの社長に昇格したのも束の間、プレイステーションに対するドリームキャスト巻き返しを狙って完敗。結局セガを退社して、個人オフィス「有限会社入交昭一郎」を立ち上げた。わずか一年でゼンリン子会社のゼンリンデータコム取締役やフライシュマン・ヒラード・ジャパンのチーフストラテジストなどタイトルを得て、2003年旭テックの執行役会長に就任していた。●大川功さんの死と前後して、ゼガやその系列に入っていたキョクイチをパチスロのサミーに蹂躙される一つのきっかけをつくった人である。リップルウッドのTOBに森村系の名門が応じた経緯はともかく、本来地味なイメージだったこの会社がいすゞOB社長が一期で馘首されたり、米の同業自動車向け鍛造部品大手を1500億円規模の買収したりと目まぐるしい。                                  ●●●
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

 ¶EDITORIAL 夏炉冬扇 
 ▼地震と原発がまたぞろ取り沙汰されているが、やはり視点が違えば様相はガラリと変わる。大小とりまぜて頻発している地震を受けて、この際原子力の電気は要らないという声は出てこない。石油やLNGにシフトさせれば、そのまま地球温暖化の悪者になる。背に腹はかえられず農薬漬けのコメや野菜を口にするような資本主義のアイロニーである。もちろん、かと言って農本主義の時代に戻れなどというオタメゴカシの理想論をかざすつもりもない。▼今頃になって言い出すのも不思議だが、経営ジャーナリズムというものを信用してはいけない。トップにまるで接触しないのも不公平な偏執だが、経営者と同じ視点で企業や世の中を見ていても記者の使命は全うできない。エアコンの効いた応接で彼らと同じソファーに座ってコーヒーでも喫みながら、広報のオタメゴカシに付き合っているだけではどうにもならない。▼内橋克人もこんなことを述懐している。この人は神戸新聞の出身だとは承知していたが、あの『匠の時代』が夕刊フジの連載企画で世に送り出された経緯は知らなかった。無辜の民の視点は、いつも時代に蹂躙され続ける。それに感情移入を排除して共鳴する事実を掬い上げなければ、どうしようもない。花森安治さんではないが、「建前は通すべき。本音とは弱音のこと」なのである。▼中電の浜岡原発は地震対策の優等生で千ガルまで耐えられる態勢を整えている。こうテレビのトーク番組で持ち上げられているが、ここの地盤は「まさに活断層のうえにある」との一部の指摘もムベナルかな、である。安全な戦争も、未来を担保された人生もありえない。この単純な事実に気づくのは簡単だが、向き合わされる頃にたいていは後の祭り。▼大分県臼杵の漁村を襲った大阪セメント誘致に反対する漁村の光景を切り取った『風成の女たち』というドキュメントがある。機動隊に守られて測量を強行しようとする会社側に対して、カザナシの女たちだけがイカダに座わり込んで阻止しようとする。視察に来た市会議員を海に突き落として一斉検挙された苦い経験が、彼女らを排除しようとする機動隊ともみ合い叫ぶ。▼「つくしょおう。つくしょおう。うんな犬か、かかあも子もねえんかあ。つくしょおう、あんまりじゃねえかあ」。たまりかねて助けに行こうとする男たちに、女たちは「とうちゃん来ちゃならんで。来るなえ、来たら思うつぼでえ」。核廃棄物の最終処分場誘致のどたばたでも、組みしても組みしなくても住民の心は割れ渇き続ける。原発立地を断念した芦浜を町ぐるみズタズタにした責任を、中電だけに負わせるのも酷に過ぎる。▼あの戦争の時代でも現在でも、世のヒエラルキーは変わらない。中越沖地震で半日の在庫しかなく操業停止に追い込まれたトヨタで、「一日でも早く遅れを取り戻す」とラインの工員たちは鸚鵡返しに声をそろえる。しかし、カレンダーは神さまの領域のはずである。  
   ▼実は先月号で取り上げた東海東京証券の株主総会のナゴヤ回帰と前後して、奥村雅英さんの母上が亡くなられていた。ご本人の頑なな希望を受け入れざるを得なかった会社サイドとしては、情報管理が出来ている見るべきかもしれない。ただ、遅れ馳せにでも事後の新聞へのリリースをやっておかないと、奥村さん自身が年賀状拝辞の挨拶を振り回して「意地を張り過ぎたか」と苦笑しなくてはならなくなるとお節介を焼いてしまった。▼旧東海の役員関連の訃報に三菱UFJが冷淡だという証だし、結果としてその人脈は水面下にもぐってしまった。一昔前なら、どうしてもこうは行かなかったろうし、やり手の広報が「どこかから話が洩れて収拾がつかない。少し前に鬼籍に入られた御尊父の時と同じだとの野次もあるにせよ、実はこの人は30年も闘われた安八・墨俣水害訴訟の原告団のリーダー格をつとめた律儀の人生だったという事情も見え隠れする。見えない身近でも、カザナシの哀歌は歌われていた。(す)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

 中部21世紀フォーラムのメーンセッションの一つである『フォーラム21』の月例会は第四木曜日開催を原則にしており、とくにご要望がない限り変更はございません。したがって来月のスケジュールは7月28日です。例会場のAPAホテル名古屋錦(旧名古屋不二パークホテル052ー962ー2289)5F 「錦の間」にて、午後6時半より二時間程度を予定しております。お問い合わせなどは、 Eメール c21f@web.co.jp、または菅澤正雄事務所(052-303-2062・携帯電話090ー8150ー9782)までご連絡下さい。なお、弊フォーラム・公式ホームページ『Paradigm21・Web』に未掲載の月報は http://c21f.exblog.jp/ にて仮公開させていただいておりますほか、ミラーサイト http://blog.goo.ne.jp/c21f  http://ameblo.jp/c21f/ http://c21f.blog56.fc2.com/ http: //blog.livedoor.jp/c21f/も稼働を始めました。【Paradigm21は、民間オンブズマンとして会員への言論啓蒙だけを目的としています。世論形成をめざしたモニター配信は、事務局と各委員会の諮問にもとづき決定されております/ 表題のパラダイムとは、世の中の規範や枠組みを意味し、その変化を表す言葉です】