朝顔







マフィンが上手に焼けたので、皆さんに食べてもらうべく森に向かう。
けど、たまたま皆さん出かけてる時間だったみたいで。
残ってらしたルッツさんも、忙しそうに行ったり来たりしてる。
出直そうかなとも思ったけれど、

「じゃあ後でお茶にしよう。」

そう言っていただけたから、小屋の中で待つことにした。
でも、1人だし、時間を潰すようなものは持ってきてなかったしで、だんだん寂しくなってくる。
1人は、あまり得意じゃない。
意識し始めたら、さらに寂しくなってきて、顔を上げてられなくなり、とうとう涙まで滲み始めてしまった。
寂しいな、そう口にしかけた時、ルッツさんが小屋に戻ってきた。

「あ、お帰りなさい!」

ぱっと顔を上げると、ちょっと困った顔のルッツさん。

「ごめんね、もうちょっと待ってね。」

「あ、ごめんなさい。待ってます。」

今日は暑いから開けておくねと言って、ルッツさんはドアを閉めずに小屋を出ていく。
見送った背中が見えなくなると、引いていた寂しさがまた、じわりじわりと戻ってくる。
膝の上に乗せていただけの手が、いつのまにかスカートを握りしめてしまってる。
皺になっちゃうなと思いながらも、離せない。

時々、ルッツさんが開け放たれた扉の前を通って行くけれど、まだ忙しいみたいで、前を通るだけ。
でも、私の様子は気にかけて下さってるみたいで、通りかかるたびに目が合う。
それだけで、ちょっとだけ、寂しさが紛れるから、頑張って待とうと思えた。
ただ、目が合うとき、いつも笑顔じゃなくて、いつかの模擬戦の時の様な笑顔になってる理由は、私には分からなかった。